コロナ後、ライブコマースの盛り上がりが加速している。習近平や钟南山をはじめ政府関係者まで登場したり、専門の番組が始まったりと裾野が広がっているのは、自宅で「無接触」で買い物ができること、閉じ込められていたので単に味気なく買うだけでなく暇つぶしがしたいという需要があったという消費者側の都合に加えて、長期間店を占めざるを得ず在庫がだぶついた店側、経済を刺激したい政府の意向といったところも組み合わさっているのだろう。

一方光ある所に闇もまた、というのは物事の常でもある。ライブコマースも例外ではなく…というのが今日紹介する記事だ。日本で紹介される一般的な「中国すげえ」記事では絶対に紹介されない、しかし中国に少しでも首を突っ込んでいれば容易に想像がつく暗部がかなり具体的に紹介されている。

ライブコマースの数の水増しというと、この画像を思い出す。

5年くらい前だろうか?正確な時期は忘れたが斗鱼というライブ放送専門のサイトのゲーム中継で、盛り上がりを演出するために同時閲覧者の数を水増し…しすぎて13億人というインターネット利用者の合計を越えてしまったという冗談のようなスクリーンショットだ(ライブで見ていたわけではないので真偽不明と言えば不明ではあるが…)。

まあ、ようするに「よくある話」ではある。

 

抖音快手ライブコマースの水増し徹底調査:
25元で人気値100、58元でファン1万

出典:抖音快手直播刷量起底:25元100人气,58元1万粉丝(燃财经 6/1)

累計ライブ観覧1.17憶人…5月21日、薇娅viyaは感謝節のライブ放送でまた新しい記録を樹立した。この数は中国人の10人に一人が薇娅のライブ会場を訪れたことになる。

5月15日はインターネット業界はライブコマースの宴の日を迎えていた。3人の大物がそれぞれ別のプラットフォームで放送を行ったのだ。百度の李彦宏の初めてのショーは926万人に観覧され、董明珠が京东で行った配信では733万人が見て、「賞味期限切れ」と笑われた罗永浩のその日の配信も600万人以上が見た。

100万、1000万のオーディエンスがいること自体は、トップランカーたちにとってはすでに日常と化している。一方中級配信者のファンは1-10万の間、それよりさらに下のランクとなると通常1万以下だ。しかしそこに含まれる「水分」のことはあまり知られていない。

ライブ放送を経由した販売が大爆発したのち、配信者たちの収入もまたうなぎ上りだ。売った商品の価格とコミッションに直接関係があるのはどれだけファンがいるかと、購買転化率だ。例えば薇娅の場合25万の広告費と20%のコミッション、李佳琦は坑位费(訳注:放送枠を確保する費用、広告費)18万元、コミッションは20%からだ。業界関係者によれば、この業界で水増しが行われることは別に不思議でも何でもなく、演出のひとつにしか過ぎない。

1回10万以上のオーディエンスが見る配信に、どれだけの水分が含まれているのか?

「ホントの人間なんか100人くらいしかいない」とあるライブプラットフォームの技術運営担当者王凯はそのようなことを言う。彼の仕事上のKPIはライブのオーディエンスの数を「最適化」することだ。

編集部が検索エンジンやQQで「抖音、快手ライブでフォロワーを増やす/ホットトピック入り」といったキーワードで検索を試みた所、多くのプラットフォーム向けの広告業者の広告を見つけることができた。提供メニューはどれもさほど変わらず、フォロワー増加、イイねやコメントの水増し、ホットトピックにのせるといったことだ。。価格は数十元から数百元まで、23元で100人の実在する人のフォロワー、4元で10つの普通のコメント…それ以外にも15元~399元でのセットなどもある。やりかたも簡単で、ユーザーはサイト上で自分で買うことも、もしくはチャットなどで担当と話しながら決めることができる。

フォロワー数水増し(左)、抖音の各種パラメータ水増し(右)

快手、抖音のオフィシャルの広告ツール、Dou+、快手直播などは配信者が金を払いさえすれば公式の手段でトラフィックを獲得することができる。しかしそれらは価格面でいえば水増し専門の会社と比べると2-3倍高く、身近とはいえない。水増し会社の担当者は彼らの手法とオフィシャルの方法に手法上の違いはまったくないという。王凯はライブ会場で十何万人が見ているというのは、彼がバックヤードで打った6桁の数字が表示されているだけだとうそぶく。彼にいわせれば配信者だろうが会社だろうがオフィシャルだろうが、ライブ会場でのこうした水増し行為はすでに業界内の誰でも知っている公然の秘密と化しているという。

水増し会社の実態、フォロワー、人気、インタラクション

「五月」はあるLOLの配信者で、最近抖音の公会(訳注:MCNのような組織)に加入した。公会は毎日3時間の配信を要求した。しかし最初の一週間はまだファンが100人ちょっとしかいなかったため、ライブ会場ではほとんどの人が見ていなかった。「たまに僕がごり押しした友達が見に来るって程度だった」と五月はいう。

五月にとっては短い時間でたくさんのフォロワーを集めることは簡単なことではなかった。フォロワーがある程度いなければ、プラットフォームのレコメンドを得ることもまた難しい。彼のような新人は毎日数え切れないほど抖音や快手に参入し、その需要が市場を生み出す。だからライブコマース運営を旗印にしてはいるものの実際の業務は水増しといった会社は一種の流行になった。編集部はそうした中からショート動画からライブ、フォロワー数水増しからインタラクション数の捏造まですべてを手掛ける5社の話を聞いた。

1社目が提供したメニュー表

フォロワー数の水増しは配信者からもっとも人気がある。最初の会社が提供した快手のメニュー表では1000個のクオリティが高い実在のフォロワー(本当の写真を使ったアイコン、ハンドルネーム、フォロワーや自分の投稿があることを指す)の価格は180元だが、投稿は自分で用意する必要がある。

2社めの抖音を主戦場とする会社の価格はもっと安く、1万のフォロワーを増やすのに58元しかかからない。しかも一時間で実施可能という。編集部が事後の保障について質問したところ、「いまや水増しはどこにでもあることで、この価格ですら相場からしたら高い」との回答だった。

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一定数のフォロワーの地盤ができたところで、次に行うのは配信会場の人気値、つまり配信を見ている人を増やすことだ。

「ひとりあたり10人、アイコンと投稿もある、本物だし、ライブの話題に合わせて配信者とインタラクションも可能だ」三社めの担当が提供した抖音の配信会場の見積もりだ。また挂榜(配信会場の右上にアイコンを表示させること。通常配信者にギフトを送ったりする比較的「高級」なユーザ)の会場人気値も売りに出ており、これは人気値100につき220元、いいねやコメントなどとインタラクションも可能だ。

3社めとのwechatの会話のスクショ

4社めのやりかたは比較的単純だ。「挂榜には掲載されず人気値50を2時間保って14元」4社目の担当者は編集部に言う。プラットフォーム側も常にパトロールを行っており、フォロワーや人気値の水増しを見つけた場合はアカウントの凍結などを行う。もしこのような監視にひっかかってアカウントが凍結されても彼らは責任を取らないという。

この会社の快手のライブ会場関係の費用はフォロワー50増加につき10元、4時間の挂榜も1日借り切っても15元しかかからない。人気値100で18元、同じように4時間の挂榜と1日借り切りで25元だ(訳注おわび:意味が分からないと思うが正直僕自身借り切りと4時間の関係がわからない。原文を4人のIT関係の中国人と複数の日本人専門家に見せて確認したが誰もわからなかった)。フォロワーや人気値を売る以外「代理業」の転売も彼らの主要業務のひとつだ。

5社めは「99元の入門費を払えば代理人になれる。それを転売すれば、自分の下層の発注ごとに15%のコミッションを受け取ることができる」という。「しかも代理人は自分で価格を決められる。プラットフォームで受注し、プラットフォームに客が払う金の85%を収めれば、残りは自分でとることができる」

5社提供の集客用ポスター

公式も行う水増し、フォロワー増加、インタラクション水増し、そしてホットトピックに

クライアントのライブ会場の様々なデータを「コントロール」しているようなグレーゾーンを歩く水増し会社に言わせれば、「リスクを冒して小銭を稼ぐ」ことでしかない。しかも18年年末ごろから、抖音、快手などの公式も配信者に対して様々な「サービス」を提供しはじめている。

Q&Aサイト知乎の中の匿名投稿には快手に投稿した動画に実在しないフォロワーがいると証言するものもあった。その人物はこれらはプラットフォームから送られたものでしかも自分は金を払ったわけでもないという。

業界関係者によると、クリエイターのアクティブさを保ちプラットフォームが流行ってる感を出すため、いわば「公益のため」に新人にフォロワーを送ることは行われているという。しかしそのほとんどはゾンビフォロワーだ。

証言した知乎ユーザの管理画面のフォロワー一覧

ある抖音ユーザは記者に対し彼が買ったDou+(訳注:抖音がオフィシャルで提供するフォロワー増加機能)ツールの効果を見せた。これに5000元払うと200人ほどファンが増える。ほとんどは大してアクティブではなく、自分の作品を投稿したこともなく、アイコンはネットの拾い絵で、いままでイイねを押した内容もほぼ似たようなものばかりだ。このユーザはこれらもゾンビフォロワーであると疑っている。

確かに抖音、快手などでの人気配信者のライブ会場を見るとIDが「ユーザ(用户)」から始まり、あとに数字が続く(例:用户1234567)アカウントが数多くみられる。共通点はそのどれもが作品を投稿しておらず、数個の動画にイイねしているだけという状態である点だ。

ライブ会場には違う種類のゾンビフォロワーもいる。彼らはコメント投稿で場を盛り上げることを行うが、“666”、“主播好帅(配信者カッコいい)”など配信内容とまったく関係ない決まり切ったセリフを投稿し続けることだ。

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抖音のDou+は18年11月に公開された。ユーザは金を払って広告を出稿することができ、人数やサービスを選べば使用後の関係パラメータの上昇をみることができる。知乎ユーザの“张蕊”によればはDou+のローンチ直後はユーザの滞留とインタラクション率はそれなりに高かったが、2019年ごろから公式が送ってくるファンにはゾンビフォロワーが混ざるようになり滞留率も下がり、しかも外部にも水増し業者がいるような状況では抖音というプラットフォームで見ることができるそれぞれのデータの信頼性はどんどん下がっていっていると述べている。「自媒体が生き残りたいと思ったらきちんとしたコンテンツを作らないとだめだ。コンテンツがよくて初めてファンがつくわけで、こざかしいアプローチは決して長期的にはいい方向に作用しない」。

抖音のDou+の提供する広告出稿機能は当初、ショート動画だけに対するものだった。しかし最近ライブ配信用の機能が追加され、そのことにより配信者は過去動画を通してライブ会場に誘導するといった面倒なことはせずに直接ライブ会場に誘導することができるようになった。しかしもし滞留率を高めたいと思ったら、そのコンテンツにあった運営を行う必要があった。ライバルである快手も2019年11月にライブ配信関連の広告業務を始めた。

新华网のEC担当者である王盛によると、公式のライブ放送加熱機能はプラットフォームの商業化のひとつの発露であるという。それは例えば阿里妈妈の直通车、钻展(石展位、天猫淘宝の広告枠)などと同様プラットフォームのトラフィックを投稿者・配信者に二次的に分配する仕組みと同じだ。「しかも抖音の80%の業務はプラットフォーム側が抑えているため、ユーザはとても受動的にならざるをえない」と彼は述べる。

編集部が各プラットフォームの運営規則を調べたところによると、抖音のDou+には主に2つの形式がある。ひとつは直接ライブ会場を「加熱」する方法で、ライブのトップページに直接プラットフォームのレコメンとして対象の会場が現れる。もうひとつは間接的な加熱方法で、動画広告の形でレコメン先のページを見せ、アイコンをクリックするるとライブ会場に入れる方法だ。

Dou+の2種類の課金方法

この2つの方法の価格は大して変わらない。100抖币(100元)から最高20万抖币まで購入可能で、プラットフォーム側のルールにより25人-60万人の幅で視聴者が増加する。購入時には視聴者の数を選ぶだけでなく、年齢、性別など視聴者の属性や広告の露出時間を30分から24時間まで選択することができる。

快手にも同様のサービスが存在するが、ロジックは多少異なる。例えば成果報酬型、つまり実際にライブ会場に入った人の数に応じて課金される。具体的には例えば1000人から課金可能で、広告主は視聴者一人あたりの費用を指定することができる。これは入札式のようなもので、プラットフォーム側は一人当たりの費用を高く入札した広告主に優先してリソースを配分する。快手公式のイントロダクション動画によれば、昼間あるいは夜のピーク時間帯にはこの価格は高くなり、ライブ会場への人の流入も加速するという。

水増しの方法論、存在しない電話番号、IP代理サイト

上で述べた水増し業者のうちの一社の担当者は抖音、快手が公式に手掛ける方法と彼ら外部の代理運営会社の方法はいずれも微信のグループ内にライブ会場の情報をシェアし、グループのメンバーにクリックさせるというやり方で変わらないという。もし企業案件であれば価格はさらに高くなる。ただこれに関しては公式の確認は取れていない。

編集部の比較でわかったのは、価格差が非常に激しいということだ。例えば抖音を例にすると、公式の方法では100元投資すれば50-300の視聴者を獲得できて露出時間の長さも選べる。しかし代理運営会社の価格設定は透明で、単に右上に表示される視聴者数を上げるだけなら100人で32元、もし榜人气に登場する(つまりアイコン、HNなどがオンラインの他のユーザに見られる可能性がある)場合は100人で78元しかかからない。

累計ユーザ数とライブ会場のデータをいじることは、とあるライブプラットフォームの技術運営担当王凯の日常の仕事の一部で、彼はIP代理サイトを通じてIPを得ている。実在しない電話番号を使えば無料でSMSを受け取ることができるので、その方法で累計ユーザ数を増やしている。もしプラットフォームのチェックが厳しくなったとしてもIPアドレスを変えれば監視を潜り抜けられるしそれほど技術的に難しいわけでもない。単にこうしたIP代理サイトで存在しないIPを購入すればそれでいい。IPを購入するためのソフトは12か月で最も高くても889元ほどの費用で、スタティック、ダイナミックそれぞれのIPと専用IPを含む。

王凯は自分自身IP代理サイトで多くのライブプラットフォーム運営の登録情報を見たことがあるという。彼が提供したスクリーンショットを見る限り同じひとつの存在しない携帯番号が快手、抖音、豆瓣网など多くのプラットフォームの情報を受信していた。

ひとつの実在しない電話番号が15時間以内に受け取ったSMS

プラットフォーム側の監視を避けるため、クラウドフォン(訳注:実際には存在しない、データとしてのスマホ)を利用し、複数のIPを生成することで多くのアカウントを同時に操る。似たような手段で「グループコントロール機能」もあり、これは一台のPCで100台のスマホを管理できる。

Bilibili動画のあるうp主が抖音、快手でどのように水増しを行うか実演する動画の中で、実際にこの手法を紹介していたことがある。ここで使われていたのは智硕云科技という会社が販売するグループコントロールソフトで、どのように1台のスマホで数十のアカウントを操作し、ひとつのライブ会場に入ってコメントしたりイイねしたりするかを解説していた。


※訳注:原文ではキャプチャだが、せっかくなので動画を見つけて貼っている

王凯によればこうしたソフトの利用はライブ会場のにぎわいを演出するためのよくみられる手法だという。彼によればプラットフォーム側がプログラムによるボットを用意していることもあるという。まず会場内の弾幕で表示されている内容を解析し、ボットはそれをまねて発言する。例えばここ数秒の字幕が全部「666」だったらボットも「666」と発言するといった具合だ。コメント欄も同じように自動的な発言のテンプレが存在する。「どのプラットフォームも弾幕は保存しないから、過ぎてしまえば調べることもできないんだよ」と王凯はいう。

ライブ配信が盛り上がり始めたころは歌や踊りなどの配信が多く、配信者たちが水増ししてでもホットトピックに出たがるのはトラフィックを増やすことで新しい客や「大金主」を引き付けるためだった。ライブコマースの発展に従ってさらに大規模なトラフィックと資本が流れ込み、トップクラスの配信者たちの枠価格やコミッションの金額も上がり続けている。配信のトラフィックや転化率などのデータは配信者たちやその背後のMCN、プラットフォームのもっとも重要なKPIになっている。

抖音公式の管理プラットフォームである星图の見積もりによれば、フォロワー数1000万級の配信者の価格は1時間につき20万元以上、100万級で1時間につき5万程度、数十万であれば1万元以下だ。

抖音で購入カートのリンクを生成するためには1000人以上のフォロワーが必要で、これは新人にとって低くないハードルだ。星图では配信の視聴者数とインタラクション率を見ることもできる。外部のデータモニタリングツールも配信者が売った数や総額を計算することも可能だ。

星图で見ることができるバックエンドのデータ
外部ツールを使えばコマース売上などをみることも可能

業界関係者によれば、利益を前にすればトラフィックの水増しは避けられないことでもあるのだ。損をするのは出品者とユーザのみ、ということになる。

 

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