聞くところによれば、噂自体は前々からあったらしい。しかし今回書いているのは単なる反共メディアではなく、Politicoである。中国専門媒体ではなく筆者名も伏せられていること、内容の性質上真偽の確認などとりようもないが、なくはなさそうであり、また興味深い内容であることから訳出・紹介する。

なおCIAの中国におけるプレゼンスは2010年頃からのスパイ狩りで大きな損害を受けたと報道されている。この報道を信じるとするとそこから10年あまりで最高機密級に触れ得るところまでネットワークを再構成したことになる(だから文中にあるようにバーンズが自慢しているのかもしれないが)。また露外務副大臣が国家主席に喋った内容を知ることができるのは相当少数に絞られるはずだ。当事者でもない露がどうやってこんなデリケートな情報を入手できたのかということも含めて、疑問が多いのも事実ではあるが…。

 

習近平はパージによってスターリンを目指す

中国政府の上層部の不安定の兆しとして、習が敵とみなした外交政策や国防の責任者が姿を消しつつある。

China’s Xi goes full Stalin with purge (2023/12/6 Politico)

習近平主席の宮廷にはいま腐臭が漂う。

世界が中東とウクライナでの戦争に気を取られている一方で、スターリンを彷彿とさせる粛清が中国の超秘密主義の政治体制を席巻しており、世界経済、さらには地域の平和の見通しに重大な影響を及ぼしている。治安当局が弾圧を全体主義レベルまで強化し、国内で実際に何が起こっているかを知ることがほぼ不可能となっているにもかかわらず、北京政府から発せられるシグナルは紛れもないものである。

外相と国防相の原因不明の失踪と解任(両者とも習支持者で、今年初めの失踪わずか数カ月前に厳選され抜擢された)は、ほんの2つの例にすぎない。このほかの著名な犠牲者には、中国の核兵器計画を担当する将軍や中国の金融部門を監督する一部の高官も含まれる。これら元習近平信奉者の何人かは明らかに拘留中に死亡した。

もう一つの不気味な兆候は、最近引退した李克強前首相の早すぎる死である。彼は共産主義序列の中でヒエラルキー2位に位置し、世界最高の医療を受けていたにも関わらず、10月下旬に上海のプールで心臓発作で死亡したとされている。李前首相死後、習氏はかつてのライバルに対する公の追悼活動を大幅に削減するよう命じた。中国の多くの人の心の中では、「プールでの心臓発作」はウラジーミル・プーチンを怒らせた党官僚の「窓からの転落」と同じ意味合いを持っている。

2012年に彼の治世が始まって以来、終わりのない粛清により、習近平の刺激的な用語でいうところの、共産党トップの「虎​​」から下級官僚の「ハエ」に至るまで、何百万人もの役人がパージされてきた。現在が異なるのは、無力化されている役人たちが敵対派閥のメンバーではなく習自身の派閥の支持者たちであり、そしてそれが政権の安定性に深刻な疑問をもたらしていることだ。

天上の首都・北京にこれほど狂熱の雰囲気が漂っているため、孤立したパラノイアの習主席が誤算を起こし、弱い隣国のひとつとの武力衝突を引き起こしたり、国内問題から注意をそらすために民主主義国台湾への全面侵攻を開始したりするのではないかとの懸念がある。

敵はどこにでも

中南海に古くからある帝国の指導部で起こった政治的激震が引き起こしたさざ波は、すでに悲惨な中国経済の状態をさらに悪化させている。

「私たちは中国が国内的に困難に直面しているのを目の当たりにしています。高齢化社会、人口動態、深刻な住宅危機、成長の鈍化、大学を卒業した若い世代が民間部門で十分な仕事を見つけられなくなったことによる予期せぬ失業などだ」と約5年ぶりのEU・中国対面会談に出席するために今週欧州理事会のシャルル・ミシェル首相と共に北京に赴く予定の欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は先週、POLITICOに語った。「国内にはいくつかの課題が存在するといえます」。

中国の金融家や実業家たちは(静かに)「習近平の新時代における中国の特色ある社会主義思想」を研究するために数えきれないほどの時間を費やさなければならないと不満を漏らしている。これは痛ましいほど大げさな統治上のマントラであり、要するにイデオロギーなき全体主義的統治と個人崇拝の中国への回帰を意味する。

ここ数週間、同国の大手投資銀行はマクロ経済や市場に関する否定的なコメントや、同国の銀行家が「享楽的なライフスタイル」を送っていることを示唆する可能性のあるあらゆる行為を禁止した。

2012年に共産党総書記に就任して間もなく、習は永遠に終わることのない「反汚職」キャンペーン、真の、あるいはそうと認識された敵の粛清、を開始した。人民解放軍の数百人にのぼる上級将校と数千人の党幹部が逮捕、失踪、または「自殺」(自殺に追い込まれるか、自殺に見せかけた状況で殺害される)されている。

この長年にわたる粛清の恩恵を受けてきたのは、キャリアの初期に習氏に協力し、「人民の指導者」への疑いのない忠誠を主な資格とする地方官僚たちだ。

スモールタウン・ボーイズ

こうした元小さな町の役人たちは現在、中国で最高権力を握る政治局常務委員会の過半数を占めている。

中国外交部の元報道官である秦剛はそのような忠実な人物の1人で、2014年から2018年にかけて中国の首席儀典官に就任し習主席と外国要人との交流のほとんどを監督するようになってからキャリアが飛躍的に高まった。秦は副部長としての短期間の任期を経て2021年7月に駐ワシントン大使に任命され、わずか18か月後には外交部長に任命された。この異例の急速な出世について中国当局者は、秦氏が「核心」との親密さと個人的な好意を理由に挙げている。

大臣就任からわずか半年後の今年6月25日、秦は北京でスリランカ、ベトナムの外相、ロシアのアンドレイ・ルデンコ外務副大臣と会談した。

そして、彼は姿を消した。

中国高官と接触のある複数の関係者によると、北京におけるルデンコ外務副大臣の本当の使命は、外相と人民解放軍の幹部数名が西側情報機関によって浸透されたことを習に知らせることだった。

彼の失踪後、秦と中国の放送局フェニックステレビの記者、傅暁天(フー・シャオティエン)との関係、彼女と秦との間には米国国籍の息子がいるという滑稽な話が浮上した。この記事は中国のサイバー検閲官の明らかな同意を得て、オンラインで広く拡散した。

傅は英国諜報機関の伝統的なリクルーティング拠点であるケンブリッジ大学に通い、10年以上前にロンドンの中国大使館に赴任していた秦に初めて会った。2016年、傅の母校ケンブリッジのチャーチル・カレッジは傅による「非常に珍しい…一連の寛大な贈り物」に感謝して、庭園に彼女の名前を付けた。その総額は少なくとも25万ポンドに上ると報じられている。秦の失踪前、傅はSNS上で秦を子どもの父親としてほぼ指名していた。そして4月に彼女は政府調達によるプライベートジェットと思われる飛行機で北京に向かったのを最後に、消息を絶っている。そして中国のプロパガンダシステムは、秦の失踪はこの不倫と違法な米国籍の子供が原因であると強く示唆している。

ロケットマン

政府高官と接触のある複数の関係者によると、彼の突然の失踪の本当の理由は国防相と中国の核兵器開発計画を監督するロケット部隊を指揮する将軍らが関与した、より深刻なスキャンダルに関与したためだという。秦の行方不明とほぼ同時に、ロケット部隊の最高司令官である李玉超、副官の劉光斌と元副副官の張真中も全員行方不明となった。部隊の他の数人の上級軍人および元将校も同様に拘束され、国営メディアの報道によると少なくとも元副司令官1人が原因不明の病気で死亡した。行方不明の司令官は最終的に正式に解雇されて海軍と空軍の士官が後任となったが、ロケット部隊のトップはこれまでほぼ常に内部から昇進していたため、非常に珍しい人事だと言える。

この一連のパージが公式に認められてから間もなく、習が今年3月に中国国防相に指名したばかりの李尚福も失踪した。同氏の正式な解任は10月下旬に発表された。さらに陰謀を深めたのは、7月に秦氏が正式に外相から解任される前日の国営メディアの簡潔な報道だった。同紙は、中国の最高指導者と習主席の護衛を所轄する中央警備隊の司令官を2015年から務めている王少軍が、「治療の甲斐なく」3カ月前に死亡していたと発表した。

中国の核兵器計画は近年大幅に拡大している。中国高官と接触のある関係者によると、ルデンコ露外務副大臣の習氏へのメッセージには、秦氏とロケット部隊幹部の親族が中国の核機密を西側情報機関に渡すのを手伝ったという非難が含まれていたという。 このうち2人は、秦氏が7月下旬、中国の最高指導者らを治療する北京の軍病院で自殺または拷問で死亡したと主張している。

敵対勢力

制度の不透明性を考慮すれば、これらの記述を決定的に確認することは不可能だ。中国政府は共産党の内情についてコメントしない。また西側情報機関の高官らは、中国での粛清についての質問に対しコメントしたり議論したりすることを拒否した。

しかし、その主張自体のセンセーショナルな性質は、北京に蔓延する熱狂的なパラノイアを明らかにしている。

偶然か計画されたものか、CIAのビル・バーンズ長官が中国国内のネットワークの再構築で「進捗を見せて」おり、同国で「強力な人的諜報能力」を持っていると述べた夏の間に、その雰囲気はさらに悪化した。そのパラノイアは官僚制度と経済のあらゆる部分に広がり、西洋化されすぎている、あるいは「敵対的な西側勢力」に近づきすぎているとみなされる人々に悪影響を及ぼしている。

流暢な英語を話し、国際会議の常連でもあった中国の財務高官の一人は、今後中国国外で開催されるイベントに参加できず、電話で話すこともできないとemailでポリティコに語った。同氏はここ数カ月で解任され、しばしばその後に汚職で摘発されることになる数十人の財務高官らの列に加わった。関係者は、同氏が「米国に近すぎる」ことと「スパイの可能性がある」として現在捜査を受けていると述べた。これは、外国人とあまりにも熱心に関わる人にとって避けられない運命のようであり、中国が西側諸国との取引にオープンであると依然として信じている人たちへの警告となるはずだ。

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