ご存知のように(?)中国大使が変わり、垂秀夫氏が着任した(大使館ウェブサイトの挨拶はこちら)。気づかなかったが11日に就任会見が大使館で開催され、その模様が記事になっている。TV東京がその様子をノーカットで残しているため、普段あまり見る機会のない大使の就任会見の内容を全て見ることができるということになる。今回はどうやら他でやっていなさそうなので、その全文書き起こしだ(適宜語順などには手を入れている)。聞き取りの限りなので質問者氏名などもし誤記があればお詫びする。

本文

皆さんこんばんは、ご紹介頂きました垂でございます。よろしくお願い致したいと思います。11月26日に北京に到着し、一昨日ようやく隔離を終了したというところでございます。

幸い中国側の配慮で北京の公邸で隔離ということで、公邸があるというお陰で、公邸の自室からオンラインで会議に参加したり、あるいはインタビューを受けたりとかですね、不自由ながら一定の仕事をすることができました。まあ隔離生活はそういうことでございました。

私の抱負についてお話ししたいと思います。当館ホームページでも挨拶のところに書かせていただきましたが、中国という日本にとって最も重要な国の大使として赴任することになったということで、非常に光栄に思うとともに、その責任の重大さを痛感しています。
特に私の場合中国の関係の仕事がとても長かった。中国関係に長く携わってきた者として、これまで積み重ねてきた知見・経験・人脈をしっかりと発揮する機会であると考えております。身を引き締めて仕事に臨んでいくつもりでございます。

これから大使として、特に二つの柱で当面しっかりと仕事していきたいというふうに思っています。邦人保護、もうひとつは日系企業支援の2つを最重要任務というふうに位置づけ、真摯に取り組んでいくつもりでございます。

法人保護につきましては、私も東京で領事局長を務めておりました。様々な領事案件の事例に接してきましたが、それぞれの案件、ひとつひとつの事案が時には心を揺さぶられるようなものでございます。今年は特にコロナの案件もございました。武漢の救出劇等もございました、その際も我が大使館がしっかりと対応してくれましたが、領事部だけではなく、今後とも館員全員が領事担当だという主体的な意識を持って引き続き取り組んでいきたいと思っています。

また二つ目の柱である法人企業の支援という点で申し上げれば、ぜひ大使館、とりわけ今日皆さんここに集まっていただいておるこの公邸を最大限活用していただきたいと思っています。大使館は時には近寄りがたいという風なイメージが持たれる場合がございます。そういう大使館の敷居を可能な限り低くして、個人のあるいは日系企業の皆様からご相談がありましたら真摯にその相談を受けながら また積極的に何かしらやれることがありましたら支援を行っていきたいと思います。
この大使公邸は、 私の持ち物ではございません。この大使公邸の維持管理というものは日本の国民の税金で成り立っています。この素晴らしい大使公邸を私どもは使わせて頂いているということになるので、それを国民の皆さん、とりわけ個々の企業の関係者あるいは文化交流をやられる方々、時には(メディアの)皆様にもぜひ使っていただきたい、積極的に活用していただきたいと思っています。

これから大使として勤めていく過程において 来年夏に東京で またその半年後に北京でオリンピック・パラリンピックが開催されます。またさ来年の2022年は日中国交正常化50周年という重要な節目になる年を迎えることになります。 新型コロナウイルスという未曾有の状況下にありながらこれら成功裏に実現するために我々大使館としてもしっかりと取り組んでいきたいというふうに思っています。

中国との関係は日本にとって最重要の二国関係のひとつであります。日中間には様々な懸念や立場の違いもございます。また時には中国が必ずしも国際的なスタンダードで動いてないと思われるような場面もございます。一方で日中両国が互いに引っ越しができない関係にあるのも、これもまた現実でございます。そうである以上、外交的に日中間で安定した関係を構築していくこと以外に、他のオプションはないと私は考えております。

主張すべき点はしっかりと主張する。ただそのためにも、安定した、率直に話し合える関係、とりわけ両国のハイレベルがいつでも意思疎通ができるような関係、こういう関係を構築しておかなければ、相手にメッセージは届きません。主張することは主張するが、一方で協力できることがあれば、そうした面を増やして積極的に協力していくこと。これが重要であると考えております。そういう意味で是々非々で、安定的な建設的な関係でございます。

この大使館は我が国が世界にもつ大使館の中で最も大きな規模の大使館でございます。今申し上げたような重要な任務を達成していくためには、大使ひとりの力では全く不十分であり、大使館のチームワークが最重要であります。一つのチームとして全力を尽くしていきたいと考えております。

最後に日本人記者の皆様は、日本の国民に対し、中国のこの今の姿、日本外交の現場、 これらを支える重要な役割を担っておられるという風に言う風に私どもは考えております。私どもとしては皆様との意思疎通を大切にしていくつもりでございます。これからもお世話になりますが、よろしくお願いしたいと思います。私の冒頭の話は以上でございます。

 

質疑応答

①NHKフジタ

Q. 延期されている習近平国家主席来日については、日本で対中世論が厳しくなっていることを鑑みてどのように進めていこうと考えているか。

A. 冒頭から申し訳ないがこの質問には答えるのが難しい。いまわれわれがやらなければいけないのは、新型コロナウイルス収束に専念するということに尽きる。これにつきましては具体的な日程調整を行うことができる段階にはないという風に申し上げざるをえません。

ただそのうえで申し上げれば、9月に行われた菅総理と習近平国家主席の電話の会談でも、菅総理の方から首脳間もハイレベルで緊密な連携を行っていくことこの重要性が指摘されております。そうした意味では日中間のハイレベルの対応が必要であるということこれは論を待たないと考えております。


②読売新聞ヨシダ

Q. 日本側の対中感情が極めて悪い、それを反転させるためになにができるか真剣に感がなければならないと大使は以前述べたが、大使として改善に対して中国側にどのようなことを求めるつもりなのか。

A. まず一般論として申し上げれば、政府と政府の関係といっても、つきつめていえば人と人の関係、国民と国民との関係、信頼関係があるかどうかに帰結すると考えております。
そうした意味で、外交当局、これは別に日本に限らず中国も、もっと別の国も含めまして、全ての国・政府・外交当局はこうした問題をきっちりと適切に処理、あるいはマネージしておく必要があるんだというふうに考えております。

かつて中国の方の対日感情がとても悪かったです。反日暴動もありましたし、とても悪かったです。私どもはそうした時にも、その時に考えられるあらゆることひとつひとつ行いながら努力してきました。その後インバウンドの成果・副次的効果もあって中国の方の対日感情は相当好転したという風に一般的にも言われておりますし、私の方も肌感覚でそういう風に感じています。
ただこれでも安心しているわけではありません。国民感情の問題というのは常になにかのきっかけで爆発する可能性がある。そういう意味で非常に脆弱な問題だというふうに考えております。今ご質問がありましたように、あのアンケート調査の結果そのものもさることながら、一般的に日本の対中感情がとても良くないというのは、これはもうほぼ間違いないという風に言えると思います。もう肌感覚で見ても私も日本に今までいて、それを感じます。
そうした意味では、一義的に我々は中国人の対日感情をしっかりと改善するように努力する。日本人の対中感情をしっかりと改善するように努力するっていうのは一義的には中国の政府の方がやるべきだというふうに思ってます。

ただ私たちとしてはやれる協力、一緒になって考える必要があれば、求められればアドバイスも行なうつもりもありますし、協力していく用意もございます。しかし何でそういう風になってるかっていうことはまずは中国の方がですね、よく考えないといけないです。

ここにいらっしゃる中国で仕事をされている皆様も心の中で感じていることがあると思います。「もっとうまくやればいいのに」「なんでこんなふうにやるんだろう」「なんでこんなこと言うんだろう」「なんでこんなふうにやらないんだろう」いちいち具体的には申し上げませんが、私も感じることも多々あります。

逆に言えば私の方が中国への対日感情の改善の努力の時に、中国の方も同じように感じる事きっとあると思うんです。なんで日大使館もっとうまくやらないのかとかですね。でも皆さんも感じてる感じられてることたくさんあると思うんです。なんで中国もっと上手くやらないんだろうと、そういうようなことは私は皆様と同じような気持ちをシェアしていますし、いつでも要請があればアドバイスあるいは意見交換m協力していきたいとは思ってます。ただ、一義的には中国はよく考えていただければよいと思います。

③テレビ東京 サトウ

Q. 新型コロナウイルスのワクチンについて、欧米企業から提供を受ける取り組みが進んでいるが、数量が足りないなどといった問題がもしあった場合、安全性などはクリアされた前提で中国企業からワクチンを調達するという考えはあるか。

A. 日本政府として、来年の前半までにワクチンを全国民に提供できる数量を確保することを目指していると承知しております。
そうした観点から中国の国内のワクチン開発状況についても大使館としてもしっかりとフォローし、必要な情報を東京の方に報告していきたいと思っています。もちろん今おっしゃった通り、とても大事なものとして安全性が確保、クリアされるということがありますが、いずれにせよしっかりと中国の今のワクチンの状況は開発状況を含めて大使館として情報収集し東京に報告したい そういうふうに考えています。それ以上のことにつきましては大使館の方で今答えられるものとしては残念ながらございません。


Q. コロナが広がる前、日本産食材の輸入緩和について交渉が進んでいたかと思うが、この件がどのように進展しており、今後どのように進めていくつもりなのか。

農産品についてこれは非常に重要なご指摘、ご質問だというふうに思っております。それは米中関係が悪い云々ではなくて、そういうものは超えて、本当にこの問題については取りくんで行かないといけないと思っています。来年3月に東日本大震災10年目の節目を迎えるという状況であるにも関わらず、とても残念なことでございますが、中国を含めアジアの国々からまだ農産品の輸入規制が解除されていないということ、これは私どもとしてしっかりと対応しないといけないというふうに考えています。
この点につきましては先般の日中外相会談においても茂木外務大臣の方からもしっかりと取り上げ、双方で日中農水産物貿易協力メカニズムにものを立ち上げることで一致しております。こういうメカニズムをしっかりと利用しながら、中国に対して1日も早くこの輸入規制の問題、解除できるように、しっかりと対応していく必要があると考えています。


④日本経済新聞 タカハシ

Q.中国のTPP11参加について、懸念もあるが日本としては参加を歓迎するか、それとも慎重なのか

A. これはある意味で答えは簡単なんだと思うんです。TPP というのは釈迦に説法だと思いますがまあ hi-standard で、21世紀型のルールを決めたとてもハイレベルの新しい取り決めであると。もう市場アクセスのところももちろんそうでし、ルール面においてもとても厳しい、高いレベルを求めているものであります。
そういう観点から申し上げれば、それを満たす用意が中国にあるんであれば、これは別に中国を含めて様々なエコノミーが感心表明を行っているということについては歓迎することです。簡単に申し上げれば、中国本当にできるんですか、ということはしっかりと見極めていく必要があるということだと思います。
中国もTPP について数年かけて相当研究してきたんだと思います。彼らとしてはそういう意味では時間をかけてでも入ってきたいっていうことになるのかもしれないんですが、あくまでも我々としてはルールをまげて、或いは例外条項をつけてということはあり得ないという事だと思います。どこまで中国自身が本当に用意ができているのかどうかが問われてくるというふうに考えています。まずはRCEPをお互いに調印したので、ここでの動きを見て、今後もしかしたら日中韓という風にもなるかも分かりませんしTPP イレブンについてはもうしばらく中国としてどう対応してくるのか、本当にそういう用意があるのかどうかを見極めたいと考えている次第でございます。


⑤東京新聞 ナカザワ

Q. 香港やウイグル自治区での人権にかかわる事案で国際的な非難を浴びているが、どのように対応していくか

A. ここは先ほども私が申し上げた通りでございます。そういうような国際的なスタンダードに基づかないと思われる問題、とりわけ人権にかかわるようなことも含めて、主張すべき必要があるときは主張するという事に尽きる。


⑥ 時事通信 シカモリ

Q. 日中往来のファストトラックについて、従来とあまり変わらないという意見もあるが

A. 期待、目指してたものと、現実の今の状況、これは今おっしゃったような、乖離があるのかもしれません。これはいろんな理由もあるんだと思います。現実に日本もいままた相当感染者が増えていて、中国は数としてはそんなに出なくても、相当もう既にご存知のように敏感になってます。
そういう意味で、本来これを機に往来をしっかりと進めていきたいと考えていたんですが、中国側はどうしてもはっきりと今ご指摘の通りで、(手続きを)明確に示してない部分があるということで、利用したいと考えている人たちの中で戸惑いがございます。私としてはそういうことを中国側にしっかり伝えながら、手続きの詳細をしっかり公表して欲しいとか、その時には例えば招聘状がなかなか出ないんじゃないかとか、まあもうそういうような具体的なことも含めまして、今は中国側に改善というのか、より明確化するように手続きの促進、働きかけを今おこなっているところでございます。まあそういう意味では、結果的にはまだご不便をかけているというところは多々あるかと思います


⑦中日新聞 サカモト

Q. 2022年に日中国交正常化50周年を迎えるが、それについて具体的に考えていることがあれば

A. もうそれは最初の冒頭を申し上げさせていただいたつもりで、当面私どもとしてしっかりやっていくものとして、邦人保護と日本企業支援こういうことをしっかりやっていきたいと。ただ日本企業支援といっても、細いの狭い意味での日本企業支援よりも、日本素晴らしい日本の製品とか、日本の技術、それから日本の製品や日本の地方の素晴らしさとか、もちろん今このコロナの問題で往来もできない状況でありますけれども、こういう日本をしっかりとプロモートしていくと。しっかりいい意味での宣伝…中国語の宣伝ではなくて、いい意味での紹介、日本的な宣伝・プロモートをしていきたいということでございます。当面はそれにつきるのかなと思っています。

⑦日本テレビ トミタ

Q. 尖閣諸島の問題について、海警法についても審議が進んでいるが、この点に関して懸念点などあれば

A. これはもう これは何度でも繰り返す用意もありますけれども、我々としては全く受け入れられない。中国が尖閣近辺で行なっていること、あるいは尖閣に関わる主張こういうものについては全く我々として受け入れられない。尖閣問題についての立場もとても明確でございます。国際法的にも歴史的にも日本の主権であるということで、それに付け加えることも減らすこともなく、しっかりと今後必要に応じてしっかりと対応していく、しっかり働きかける。そういうことに尽きるものだと思います。

Q. 新たな海警法への懸念は
A. そういうことを含めてしっかりと中国に伝えていくということになります。

⑧テレビ東京 サトウ

Q. 王毅外相が日本での会見で中国側の主張を長く述べたが、それをどう受け止めるか。

A. この問題につきまして、私はもちろんその現場にいなかったということもありまして、詳しくは承知しておりません。国会等でも茂木大臣に対して質問があって、茂木大臣の後から詳しくもう既に詳しく説明があったというふうに承知しております。大臣の方からこの問題につきましてはしっかりと会談の中にも対応したし、その中の色々ルールがあったという風にきいておりますが、私の方からそれについてつけ加えることはございません。