内部抗争により足踏みするテンセントの弛緩

2018年のテンセント930機構改革(訳注:テンセントの7大事業群が改組により6大事業群に変わったこと)後、テンセントビデオは任宇昕(テンセントCOO)が管理する平台与内容事业群(PCG、プラットフォームおよびコンテンツ事業群)に振り分けられた。任は抖音やBilibiliが人気を集める一方自分たちがずっと赤字を垂れ流しているのに従業員がまったく危機感を覚えていないという事実に向かい合うことになった。

テンセントビデオの多くの従業員達は自分たちを強く信じていた。業界最下位からから1位に上り詰めた経験から、「今ちょっと少しの変化をもたらせば、 ちょっと時間はかかるかもしれないが最終的に勝つことができるだろう」と考えていたのだ。

「皆、上層部の考えを知らなかったのだ、上はOKR(訳注:Objective and Key Result、目標管理の方法論のひとつ)を定めるが、目標とする数字に関しては総監以下のスタッフに対しては知らされなかった。」とある従業員は言う。

2020年初頭アメリカにいたテンセントの副総裁でありテンセントビデオの責任者である孙忠怀はコロナウイルスによって封鎖され国に帰ることが出来なくなっていた。ある会議の時に画面に突然彼の娘の喜ぶ声が聞こえてきた。「ボスはとてもリラックスした様子だった」。

2020年Uber から移ってきた物理学博士である蒋锡茸がデータサイエンスデータ決済に関する業務を担当するとして、テンセントビデオの副総経理に突然就任した。あるテンセントビデオの従業員は、「彼女は任宇昕からテンセントビデオの技術改革に関する望みを託されているのだろう」という。蒋锡茸は内部から一匹のナマズのようだと表現される。彼女の専門はデータによる意思決定データ分析 といったことだが、実際のところもともとのプロダクトの中にテンセントビデオの総経理である舒军やマーチャンダイズや戦略分析担当の副総経理王伟もまた似たような業務を行っているからだ。「彼女は自分のミッションが必要だから、人を連れてくるだろう」とある従業員は述べた。実際知乎の技術副総裁李大任も近いうちにテンセントビデオに加入する予定だという。

もう一つの微妙な関係はテンセントビデオの革新的なリソースは映画業界の人脈とコンテンツ制作能力であるということろだ。関係者によれば(映画製作や投資を行う)テンセントピクチャーズももちろんこの領域を手掛けており、事実上激しい競合関係にあるという。程武は同時に腾讯动漫の董事长、阅文集团 CEOも務めている。2020年10月、テンセントピクチャーズは多くの映画の製作計画を発表したが、その中には多くの爱奇艺や优酷との協業が含まれていた。

組織改革後のある月例VP会の席上、フィード広告プロダクト「腾讯看点」のコンテンツ責任者がテンセントビデオに対してテンセントビデオの持つバラエティや映画版権などのコンテンツが欲しいと言ったが、孙忠怀によって直接却下された。理由は「これはテンセントビデオの核心的なアセットだからだ」というものだった。双方は午後一杯を使って協議したが、任宇昕は明確な態度を示さなかった。

以前微信が公众号に動画コンテンツを入れようとしたとき、チームはまずテンセントビデオと接触した。「テンセントビデオはもし自分たちがやるなら、再生前広告をいれること必須条件だといった」と微信のあるプロダクトマネージャーは語る。

質の高い公众号のクリエイターの作品はフォロワーたちの再訪率が高い。欠点はこの公众号の中の動画のユーザーエクスペリエンスがひどいものだということだった。「もしこの二者が手を組んでテンセントビデオの中に一つの専門のコーナーを設け、質の高い自媒体の動画コンテンツを取り揃えることができたのならば、その潜在力はもうひとつビリビリ動画が創れるくらいになるかもしれなかった。しかしUGCやPGCはテンセントビデオにとってファーストチョイスではなかった。リソースの配分においても、利益の配分においても、あるいはチームの認知においても、そうではなかったのだ」とテンセントビデオのある中級幹部は言う。

爱奇艺,优酷,テンセントビデオは10年の間もつれあい、彼ら以外のスタートアップをこのゲームから追い出した。しかし彼らの無法図な投資は逆に彼ら自身のイノベーションを大幅に制限する結果にもなった。