アリババの介入と优酷の変質、衰退

アリババはより効率的な方法でこの動画業界のやり方を変えようとした。しかし 競争相手からの脅威から完全に抜け出すことはできず、优酷が目指したかった方向性を打ち砕いてしまった。优酷がアリババに買収された後、その強いプレッシャーによって 多くの従業員が離れたが、これはアリババによる「血の交換」だと人々に理解された。まもなくアリババでEC業務に従事していた一塊の人たちが优酷の技術チーム、データチーム、会員チームを占拠するようになった。

以前の优酷はユーザーの滞在時間を重視した。新しい优酷は会員による買い物のGMVを重視した。「社員たちはどのようにして有料ユーザーの人数を多くし、客単価を高めるかということを考えるように教育をされた」。 しかしトラフィックに対する評価も過去に比べても厳格になった。例えばバラエティ番組「这!就是街舞」においては毎回の放送1時間ごとにどれだけトラフィックを得たかということが合否の基準とされた。

2017年にはアリババグループの副総裁、庄卓然(アリババ特有の社内ニックネーム「南天」)が优酷COO兼大文娱CTOに就任した。「南天は3つのレポーティングラインがあった。(优酷総裁である)杨伟东だけでなく、(アリババCEO)张勇と(アリババCTO)张建锋にも報告せねばならず、杭州と北京で毎週3つの例会を開かなければならなかった」。

彼の矛先はまず优酷の技術部門に向いた。优酷の技術チームとアリババの中のチームを無理やり融合させたのだ。非常に複雑に絡まり合った基礎技術のアップデートはユーザーエクスペリエンスに深刻な影響を与えた。最も影響が大きかったのは、動画が再生されるまでの速度が遅くなったことで、 再生中にも頻繁に止まるようになった。

优酷のプロダクトラインの中級幹部によれば当時チームはサーバーを増設してこの問題を解決しなければユーザ体験に強い影響を与えるとして強く嘆願したという。しかしこれは一蹴された。なぜならばこれは多くのコスト増をもたらすからだ。

当時优酷総裁だった杨伟东はアリババに買収されたのち、被買収側として非常に少ないアリババの中で幹部を務めた人だった。「アリババの意図は多くのお金を突っ込むことなく、インターネット的なアプローチでエンタメを改造するということだった」。「改造」という言葉はとても曖昧な一方「金を突っ込まない」というのはとても分かりやすかった

権力はさらに杨伟东に集中していった。全てのコンテンツと購買は 彼自身の承認を得る必要があった。コンテンツ購買は先に財務部門の審査を通り、広告収入によってコストを回収できるかということを立証する必要があった。本来コンテンツプロデューサーが持っていた宣伝予算も全て召し上げられ、市場部が統一管理、審査、実施するということになった。一人の業界関係者は「コンテンツ制作会社でコンテンツを作るはずの人が金も権力も突然奪われた、しかも権力を持った人はそもそも根本的にコンテンツについて分かっていない 」と言う。

「長きにわたって优酷の製作チームは多くの精力をアリババグループ内の毎年の双十一のイベントのために注いできた」とある优酷のP8クラスの社員は言う。

2016年になると优酷のトップクラスのプロデューサーやコンテンツ制作者たちは前後して出て行き、彼ら自身のリソースであった映画業界の監督や編成プロデューサーなど多くのリソースもまた消えていった。优酷の自主制作チームは以前の6チームから3チームに縮小した。

2019年末、优酷の会員は3000万人にすら達していなかった。当時これ以外の2社は既に8000万を大幅にこえていたというのに。