以前はワンホン=网红(日本の漢字で書けば網紅)といえば、フォロワー数が多い、またはイイネなどのインタラクションが多い者が影響力が高く格が高いとされた。しかし最近の中国での基準は「帯貨」つまりどれだけ商品を動かすかという事がよくその基準として取り上げられる。その戦場となるのが、今回取り上げる「ライブ配信ショッピング」だ。TVショッピングの現代版であるこのショーは、直接的な売り上げという形でその影響力をはかる事ができる事から企業にも歓迎され、大きなビジネスチャンスとなっている。

今年の双11の大きなテーマも、恐らく形式においてはこのライブ配信がニュースの中心になるだろう。誰が、どれだけの短時間で、いくら売り上げた…去年も例えば本編に出てくる薇娅や李佳琦の輝かしい実績は取り上げられたが、恐らくそれがさらに大きな規模、大きな金額で取り上げられる事になる。

自らの特技、文才などを元にのし上がる、そうして得た影響力を元に自らのブランドを打ち立て、そのフォロワー、ファンたちを相手にビジネスをすること自体は面白いとおもう。ただ、こうした直接的なセールスだけを目的にしたショーはどこか短期的で、趣に欠ける気がする…のは不要な感傷かもしれないが。

今日はその网红が「貨(商品)」を「帯(持ちこむ)」する网红带货が中国でどのように発展し、いまどうなっているかという事をまとめた記事だ。同種の記事は多いが、分量は多いものの比較的よくまとまっているので、翻訳して紹介したい。

網紅帯貨簡史

出典:网红带货简史 (2019/10/10 传媒头条転載

国慶節の連休が終わり、双11が我々に向けて手招きしている。

昨年の双11は「帯貨女王」薇娅があげた3.3億元の売上で幕を閉じ、「口紅王子」李佳琦は5分で15000本の口紅を売り切った。タオバオで網紅(网红ワンホン)と呼ばれるネット有名人によるライブ販売は2018年には千億以上の売上をもたらし、アリババのEC業務の1週間の売上にほぼ近づく額になった。またライブ放送による販売は今年の618(訳注:双11に次ぐECのお祭りデー)は各大手ECサイトの標準装備となった感がある。

ある調査によれば、2016年時点で中国の网红は100万人を超えているという。2018年のデータでは10万人以上のフォロワーがいるそれなりに有名な网红は前年同期に比べ51%増加し、フォロワーが100万人を超えるエース級の人数も23%増加した。2018年4月現在、中国における网红のフォロワー数合計数は5.88億人、53.9%が25歳以下の若者であるという。

网红の人数とフォロワーの規模が同時に増えていく中で、网红のマネタイズ能力も同時に上がっていった。2018年4月時点で、网红ECのGMVの年間成長率は62%にも及んでいる。

「网红帯貨(ネット有名人が商品を売る事)」は技術と人心に対する洞察の共謀である。このような形式は90年代のTVショッピングにその源流を求めることができる。司会者の魔性の叫びと李佳琦の「oh my god」はそっくり同じものだと言ってもいいかもしれない。モバイルインターネットの隆盛により、网红たちが品物を動かす場所は当初の微博からライブ放送サイト、ショート動画サイトと変遷していき、それは流行の変化の後を追う鳥の「渡り」のようなものだ。

このさなか、网红ECがひとつのまったく新しい時代の幕開けを迎え、消費者の買い物習慣を大きく変えた。同時に伝統的なサプライチェーンの生産方式を変え、ECの各モジュールにおける利益の分配と発言権のバランスを変え、“网红带货”は発展により、ひとつの完成されたサービス業となった。

過去と比べ、この新しいビジネスモデルは普通の人にその産業の利益分配に参加する機会を与えた。しかし、网红達に言わせると、常に利益を上げ続けるのは決して簡単な事ではない。流量ボーナスはほぼ完全に消失し、消費者は日増しにうるさくなり、エース級の网红がどのように自身の「熱」を維持するか、そしてそれ以外の普通の网红がどのように爆発的な成長を遂げればいいのかは、まだ確固たる方法論がない状態だ。

网红带货の源流、魔性のTVショッピングは
上場企業をも生んだ

网红带货という現象は、魔性のBGMとみる人を洗脳するコピーを持ったテレビショッピングにさかのぼることができるだろう。

「本来1998、現在たった998、たった998元!」「何を待っているんだ?」「ひとつ買えばもうひとつおまけ!」司会者が次々に繰り出す先導的な広告コピーは鳴りやまない電話の呼び出しとともに80后の人々の子供時代のほとんどをカバーしていた。ダイエット薬、補正下着、足湯桶、マッサージチェア、強力な機能を持った家電はずっとTVショッピングの最もホット商品だった。

TVショッピングで売られた洗脳商品には「八心八箭」もあった。このブランドはすぐに有名になった要因には、司会の侯さんのパフォーマンスは欠かせないものだった。「もし今価格を口にしたら、一瞬にして僕たちの電話回線が爆発する事はわかってる」「2カラットのオーストリアダイヤがたった998元」…以前ネット上には、深夜に侯さんの咆哮式キャッチコピーの爆発を浴びないと生きている気がしない、とふざけているのを見たことがある。

このような番組で言われる事は多くの人たちにもはったりが多く言い過ぎだと思われていたのも事実だが、それでもTVショッピングの威力を侮ってはいけない。一部の消費者の好みに適合し、そして新しさがあった事で、TVショッピングのもたらす収益は多くの上場企業を生み出した。

1998年に開業した橡果国际は07年にニューヨーク証券取引所に上場し、現在では4645万ドルの市場価値にまで成長した。14年3月、上海东方传媒集团有限公司(SMG)の黎瑞刚が推し進めた“大小文广”によって、SMG子会社の东方购物は親会社の利益の半分以上、100億元近くを稼ぎ出した。15年、湖南广播影视集团と湖南卫视は共同出資によって設立した快乐购は创业板に上場し、同年、広電系TVショッピングの一番手である风尚购物もまた新三板へと上場を果たした。

某TVショッピング

TVショッピングの集金力は疑うべくもなかった。その「マクラ~商品露出~価格~最後のひと押し」という直観的な見せ方は、中高年の買い物欲をいとも簡単に吸い付けた。しかし同時にTVショッピングに関する虚偽宣伝や返品困難などの問題も度々聞かれた。さらに重要な事に、メディアとしての制限からTVショッピングは90后や00后のメインストリームにいる人たちをつかみ損ねた。

TVショッピングは15年に頂点を迎えたあとはマイナス成長になっている。上場済みの会社のパフォーマンスも思うようにはいっていない。15年のQ1には橡果国际はTVを使ったダイレクトセールスをいったん中止した。19年上半期、风尚购总の営収は昨年同期に比べて18%下降、3198万元の赤字を出した。モバイルECの勃興が徹底的にTVショッピングのうまみを食べつくしてしまった。

初代の网红ECは、記事にイイネを集めて
フォロワーを店に流し込んだ

TVショッピングは既に次第に皆の視界から消えつつあるけれども、いっとき爆発した事は確かで、懒人经济(怠け者経済)市場の巨大さを見せつけた。「脳みそを動かさなくていい、ただ買って買って買って買うだけ」というのが多くの人にとっての買い方の選択になった。

SNSの勃興に伴い、网红がTVショッピングの司会者の役割にとって代わり、微博は最も早い時期の网红带货の主要な基地となった。2013年4月末、アリババが微博に資本参加し、初代の网红带货の土壌を育てた。定められた協議に基づき、双方はユーザの相互乗り入れ、データの交換、オンラインペイメント、オンラインセールスなどの領域で協業し、同時にユーザ及び消費者のインタラクティブでソーシャルなECのやりかたについて共同で模索した。

当時、微博のユーザ数は既に5億を超えていた。微博で人気になった网红の多くは淘宝のモデルから転身した。张大奕、雪梨、管阿姨、张沫凡などがその代表といえるだろう。

「まずは巨大なアクセス数をフォロワーに変え、さらにフォロワーを顧客に変えていくというのが方向だ。」と张沫凡は网红の発展についてのロジックを語る。微博が最も盛り上がっていた頃、彼らは写真や図に文章を組み合わせる形でメイクのtipsなどを発信し、多くのファンを獲得した。秒拍や一直播の出現後、こうした文字や写真などからショート動画やライブ放送へとやり方を変えていった。

これが微博時代の网红带货の代表的な方法論だ。初期においては彼らはモノを売る事を直接の目的とはしていなかった。個人としてのIP(訳注:日本語で言う個人ブランドのようなもの)をうちたて、素敵なライフスタイルを紹介する形でSNS上で注目を集めるというだけだった。世界中の写真を撮ったり生活を紹介するだけでなく、メイクの方法を教えたり着こなしのコツを伝えたり、実用的な情報も提供した。SNSは多くの若者の消費観を変えた。もっと安いもの、デザインももっと彼らを引き付けるものに変わっていった。デジタルネイティブたちは网红のセレクションへ絶対の信頼を置き、強い信頼と一体感を覚えている。

网红もファンコミュニティの運営を深く了解しており、全ての転送、コメント、イイネ等のデータは測定され、セールス及びサプライと緊密に連携していた。毎日5,6時間を使ってコメントやDMを見てファンたちのニーズを読み取る事は、网红の日常といっていい。

网红たちは、フォロワーのイイネが一定数集まったところで自分のブランドを押し出したり淘宝に店を開設し、自分の魅力や吸引力を発揮してフォロワーたちを実際の購買力に転化していった。

张大奕(左)と张勇(アリババ現CEO 右)

张沫凡は2010年には自らのブランド「美沫艾莫尔」を作り会社化した。2014年、张大奕は冯敏(訳注:多くの网红を生んだ存在)と共に女性向けの淘宝の店を開店し、同じ年、冯敏の如涵ホールディングスは张大奕と契約を結んだ。2年後、张大奕と如涵の親会社が作った杭州涵奕电子商务有限公司は2,28億元の売上、4478.32万元の利益を上げた。

歩みを止めないトップ网红たちは、取扱商品を増やしていった。雪梨、林珊珊などの淘宝の网红たちは次々に自分たちのブランドを打ち立てていった。そして生活用品、下着、化粧、マタニティ用品や菓子などに進出していった。

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网红带货の盛り上がりは、ショッピング習慣を変え、そして同時にサプライチェーンに変革をもたらした。

フォロワーたちを常にひきつけ、金を使わせるためには、网红は新商品を毎月更新する必要がある。場合によっては週単位で、そして予約販売の形式をとった。つまりその服が正式にショップに並ぶ前にプレビューを行い、微博上での反応やコメントを見てこの服がどの程度売れるのかを判断してから工場に発注した。

工場の元々のホールセールビジネスは、网红带货の爆発的な流行によって根本から変えられてしまった。以前は昔からある服装の工場は年間でいくつかの流行るモデルを作ればよく、それぞれのモデルは数千から数万着のロットを作っていた。だから売れ行きが良くないと容易に在庫として倉庫に滞留する事になった。

現在はそれは「少量多種類生産」に変わった。そして高速での追加生産能力も備えるようになった。自主ブランドの网红たちは服装のデザインだけでなく、工場と素材や各種生産上の細かいところまで関与するようになった。トップクラスの网红たちは独自ブランドを打ち立てる力を持ち、大きな発言権を持ってサプライチェーン自体を変えていった。

しかしトップには及ばないレベルの网红たちにとってより多いのが、既にあるブランドとのコラボであり、それはマーケティングの定石のひとつとなった。そしてそれにつれて、网红たちの心境もまた変わっていった。ファンたちとの交流を通じて、逆にファンたちの審美眼の影響を受けて、元々人を小ばかにしたような孤高の网红達も、こうした交流を通して次第に変化し大衆化していった。

全体的に見て、この時期に実際に商品を動かす力を持っていた网红は非常に限られており、彼らは専門分野のとびぬけた能力か、さもなければ美しい顔立ちを武器にしていた。

ライブ放送でモノが動く時代。
李佳琦(Austin)が推しさえすれば売れる

2015年末から16年半ばにかけて、中国のライブ放送業界は飛躍的な発展を遂げた。1000にものぼる会社が操業して市場に参入し、大企業も相応の布陣を引いた。

2016年3月,淘宝直播が公開された。そして17年には快手がECのトライアルを始めた。2018年3月に淘宝直播は手机淘宝のアプリのファーストビューに上り詰めた。そのDAUが1000万を超えたころ、抖音(TikTok)はショート動画の中で大規模なECを開始した。そして2019年4月,微信公众号もライブ放送での商品販売をはじめてトライした。

各プラットフォームの比較

このような流れと時を同じくして、网红たちが商品を売るプラットフォームも、微博からライブ放送へと移行していった。

李佳琦(Austin)はライブECにおける絶対的な代表で、元々BA出身の彼は5分間で15000本の口紅を売った記録を持つ彼は商品を動かす力においてはジャックマーをすでに超えた。「OMG、これを買うんだ!買うんだ!」という魔性の呼びかけは彼の個性を代表し、ネット上では「天も地も怖くはないが、李佳琦のOMGだけが怖い」などという言葉も飛び交っている。

ライブ放送主になるまでの2年ちょっとの時間、李佳琦の毎日の仕事はずっと重なっていた。午後3時から7時までライブ放送のための商品を選び、8時15分から放送を開始した。

報道によれば、毎日10以上の会社が列をなして彼を待っているという。商品は 原価、割引価格、マージン比率などいくつかの固定指標にまとめられ、彼は1秒以内にこれを売るか要らないか判断する必要がある。このような高回転の結果、選ぶ商品の質を担保することができる。そして4時間のライブ放送の中で何十もの商品の特性と優待などを紹介し分ける事ができるのだ。

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ECにとってユーザ獲得コストが上がり続ける現状では、网红带货というのは比較的低コストのわりに高い成約率を約束する形式となった。調査会社QuestMobile社のレポートによると、90后00后はモバイルショッピングの4割を占め中心となった。彼らの購入欲は非常に強く、誘導されやすく、衝動買いも多く、若く、そして何より下降していく市場の中では特にオピニオンリーダーの意見に頼りがちなのだという。

ある意味で、ユーザがオピニオンリーダーの意見を信用し爆買いする事は何を買うか迷う時間コストを下げる事になる。そしてそれ以外にもライブ放送のもたらす即時性と刺激はさらに横並び消費心理を加速させる。ライブ放送ビジネスの本質は最短時間で商品の価値を見せる、ショッピング欲に火をつける事だ。もし少しでも手綱を緩めれば消費の勢いはあっという間に落ちてしまう。そうした時代には美男美女であるかどうかは网红の必須条件ではなくなり、ファンたちとの交流や言語表現能力、演技力といった要素がより重視されるようになった。

ライブ放送販売の形式が成熟するに従い、网红たちの活躍の場はスタジオに限られなくなり、農場、ショッピングモールなど「歩きながら放送」といったかたちで商品を売るようになった。2018年、湘西九妹という配信者は2日で40万元分のキウイフルーツ、13日で100万kg(訳注:この数字が本当かは謎…)のオレンジを売った。奉化溪口镇新建村の陈志华は自分の育てた水蜜桃を売り切れず地面に放っておくしかなかったが、あとから15人の配信者がきて1時間以内に1500kg分を売り切ったという事もあった。

2018年淘宝双12の期間中、淘宝の配信者たちは武汉汉口北の衣服市場、湖州织里キッズウェア市場、海宁のレザー用品市場、景德镇の陶瓷市場などに分かれて12日間の配信を行い、それぞれのセールス平均は2倍にもなったという。

このころ、网红の背後に控えるチームの陣容もどんどん大きくなっていった。网红というビジネスもひとりで行うものではなく、工業化の道のりの過程にあったのだ。薇娅の後ろには谦寻がいて、李佳琦の後ろには有美ONEがあった。MCN(网红のマネージメント事務所)はマネタイズの合理的な方法を探すために商品を動かせる网红を育てていった。网红本人もMCNビジネスに手を付ける場合もあり、张大奕が大株主である如涵控股は2019年3月にアメリカで上場し、113人の网红を抱え、合計1.48億のフォロワー、年収は10億近くで「中国ECの最成功者」と呼ばれている。

いま、大プラットフォームはライブECへの関与を強めている。

淘宝は2019年中に10都市を1億以上の売上に、200のライブスタジオを同じく1億以上に育てた。京东もまた网红の「孵化計画」を進め、京东App发现频道、ビデオサイト内のリソース、そしてグループ外の抖音、快手、今日头条などからの誘導など少なくとも10億元以上の投資を行っている。网红带货の価値はプラットフォームによって無限に拡げられている。

ショート動画、商品を動かせる人は減り続け、
専門サイトが勃興する

微博とライブ配信の時代のECスターたちがいわゆる网红の域を出ていないとすると、ショート動画の盛り上がりは、こうした人たちの特徴を根本的に変えてしまった。素人だろうがスターだろうが、みなその列に加わる事になる。

快手(抖音Tiktokとならぶ大手ショート動画サイトのひとつ)で“最强带货王”と呼ばれる散打哥は19.9元の歯磨き粉を1分で3万個売った。2500万のファンがいる同じく快手の辛巴は結婚式の当日行った放送で1.3億元の売上を上げた。次第に、一般人がサイト側と両想いになる機会が増えてきた。抖音のスターである七舅脑爷が仕掛けたライブ配信ショーは108のスポンサーを集めた。

素人が一晩で网红になる、MCNとプラットフォーム側の支援があるとはいえ、その多くは運に左右される。しかしその裏には、大衆の間に普遍的に存在する、現状に甘んじないという心理がある。

名を成す前、七舅脑爷は国有企業で朝九時から夕方五時まで働く電気技師だった。ある冬の日彼は上司と出張した時、技術的な困難にあたった。彼自身の考えた方法を使えば30分で解決できるものを、上司は昔ながらのやり方にこだわり、2時間をかけた。この出来事が彼を深く絶望させ、辞職について考えるようになった。
営業職やスタジオアシスタントなどの職業を試した後、七舅脑爷はショート動画を使ったブロガーになりいっきょに成功した。仕事が順調ではない事、もしくは今の生活の現状に不満な事が网红を生む原因になったりもする。网红をすることは現実の生活から抜け出す薬のようなもので、実際にそこで商品を売る事ができれば、自分のビジネス的な価値について実感できる場ともなった。

衣服や化粧品以外にも、純粋な素人の参入によって取り扱われる種類は増えていった。日用品や農産物などがどんどんショート動画で扱われるようになり、网红ブロガーたちも、例えばデジタルガジェットのアンボックス専門、食べ物専門の美食家など様々に細分化されるようになっていった。

昔は遥か高みにいたスターたちも、徐々に地上におりてくるようになった。元アナウンサーの李湘は4月22日に初めてのライブ配信を行い、ほぼ毎週1回放送を行い、パーソナルケア、生鮮食品やお菓子、化粧品や家電などを取り扱って1か月で1000万元の売上をこえた。また柳岩曾も3時間で1500万元、郭富城は5秒で16万元のシャンプーを売った。

李湘の配信風景

ECサイトからの流入だけでなく、ショート動画サイト自身も次第にEC機能を備えるようになってきた。2018年上期、抖音の商品ショーウィンドウから淘宝にリンクするようになっていて、同時に抖音の中の店舗で買う事もできるようになった。快手の网红も「自分の店」を持つことができるようになった。

ショート動画サイト以外のその他の専門性の高いサイトも同じようにライブで商品を売るという雰囲気が徐々に形成されるようになってきた。

2018年11月、アリババが小红书に投資した後、小红书はコンテンツと淘宝の商品の一部を連動させる内部テストを行った。2019年Q1、B站(ビリビリ動画)はアリババとの協業により同じような商品販売をはじめた。しかし网红带货の形式が盛り上がってきたからといって、ECサイト同士の競争に根本的な変化があったわけではない。抖音、快手、B站の販売は結局のところ淘宝にアクセスを流し込むものだった。

この時のポピュラーな网红にとって、顔面偏差値は最も重要なものではなく、親和力と忍耐がもっと重要だった。配信者は商品に対する理解が十分にあるだけでなく個人の性格が人を引き寄せる魅力にあふれていなければならなかった。配信者は商品解説をするだけでなく、同時に今配信を見ているフォロワーをケアしなければならなかった。つまり1つの配信の中で彼らは事実上、配信者であり、販売営業であり、といった複数の役割を果たさなければならなくなったのだ。

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しかしだからといって、全てのEC配信者が苦労に見合った対価を得ているわけではない。人気配信者でなければ、新規客の残存率は低い。長い間、网红配信はアクセス数を増やしてその中の一部を顧客に転化するという方法論だったので、フォロワーたちは「その人が誰か」を見るだけで、ブランドへの意識というのはそこまで高くない。例えまだそこまで有名なブランドでないとしても、配信者が強烈に推薦すれば売り上げが国際的な有名ブランドを上回る事も可能なのだ。

淘宝直播の責任者は、今年4月に淘宝直播のDAUは900万で(超有名配信者である薇娅)はその中の300万を占め、李佳琦(これも超有名)が200万以上を占め、残りを6万以上にものぼる配信者がとりあうという状況だ。MCNだろうがECだろうが爆発的な人気を持つ新たな网红が生まれる確率はどんどん下がりつつある。ECサイト側にとっては、突出しているわけではない80%以上の网红たちをどのように爆発的に成長させていくかが、将来的な成長の可否を握る事になるだろう。

結びに

1992年に広東省の珠江チャンネルで初めてのTVショッピング番組が放送されて以来、李佳琦、薇娅、散打哥、辛巴などのライブ配信モデルまで、既に27年の時が経った。

网红的带货の歴史は、ある一面ではインターネットアクセス(流量)の変遷の歴史でもある。アクセスある所に网红あり。彼らが微博、微信、ライブ配信、淘宝、抖音、快手などと場所を変えるごとに、コンテンツと形式も変わっていった。しかしフォロワー運営によって最終的にマネタイズを実現するという根本的な道理は変わっていない。

ディケンズは、最良の時代は最悪の時代でもあると言った。

今の网红はいい時代に間に合ったと言える。ネットの利便性、サイトやウェブサービスの多様化、操作の容易さ、MCNの拡大といった要素は無数の一般人を「网红」という職業を通じて極めて速いスピードで名声と財を成す事を助けた。その上、このマーケットはまだ広がり続けている。

あるデータによれば、网红が自己のブランドや商品を売るという形式は大広告主からの熱い視線を受けている。2017年に広告主と契約を交わした网红は57.53%に及び、広告収入も网红収入の大きな部分となった。

さらに注目すべきは、网红の力を借りたがるブランドは伝統的な美容関係から自動車、レストランなどの領域に広がり、同時に広告主側の予算も増加し続けている。

しかし、网红が金を稼ぎ続ける事は決して容易な事ではない。アクセス数によるボーナスは日ごとにあてにならなくなり、普通レベルの网红が何をてこに成長するかという事に解決方法はない。トップの网红が直面するプレッシャーはさらに想像を絶するもので、彼らは自分の話題性を保つために様々なものを捧げなければならない。簡単に有名になれるという事は、逆に見れば参入障壁を築くための時間の余裕も大幅に短くなったことを意味する。

李佳琦は1年に389回の配信記録を樹立したが、ずっと話し続けたことで重度の気管支炎になってしまった。唇を保護するために食事の時を除き、分厚いリップクリームを塗る…しかし李佳琦は止まる事はできない、なぜなら彼を追いかける人々はみな、どのように次の李佳琦になればいいのか、常に考えているのだから。