本日紹介するのはChina Media Project(CMP)という名の、香港大学のJournalism and Media Studies Centreが運営するプログラムに掲載された英文記事。このCMPには以前インタビューした香港中文大学の方可成もボードに名を連ねる。記事内容はCCTVや新華社に代表されるような中国の国営メディアが、所属するアナウンサーなどに個人でTwitterなどのSNSアカウントを開設させていること、そして近年彼らが(おそらく組織の指示によって)所属先を明示しないようになってきたことなどを指摘するものだ。
ジャーナリストの個人アカウントは欧米、あるいは日本のメディアでも存在する。ただその多くは自分が関わった記事や番組を紹介したり、日々の生活をつぶやいたりはするが、基本的に社の考え方とは独立しているとされることが多い。対して(確定的な情報がない以上断言はできないにせよ)中国メディアのこうした海外SNSの使いかたはあくまで社(あるいは党・政府)の考えを反映したものになっている、ということだ。考えてみると党メディアのスタッフのこうしたプロフィールに「Views my own」とか書いてあるのは見たことがない。もし書いてあったら吹き出してしまいそうな気もするが。
こうしたやり方の根本的な問題、あるいは狡さは、こうしたスタッフたちは所属先を明記せずに個人として行動することによって何かがあった時の不利益やリスクを個人としてかぶる羽目になっているという構造だ。まさに工作員のお作法であり、「例によって、君もしくは君のメンバーがとらえられ、あるいは殺されても、当局は一切関知しないからそのつもりで」というわけだ。問題は彼らの多くがジム・フェルプスほど(あるいは自分で考えるほど)賢くも、リスクに自覚的でもないことだろう。そして本文に登場するフォロワー300万人の90年生まれの徐氏の発言が皮肉にしか聞こえないのは、煙があろうがなかろうが、いつの時代も戦争の前線に立たされて死んでいくのは功名心をくすぐられた若者だ、という点だろう。
同時に興味深いのが、Twitterなどでよく目にする「State owned media」というラベリングによる警告に「広告が出稿できなくなる(=情報の拡散を抑える)」という実際上の効果があるということが指摘されている点だ(ただし本文にも出てくるように、Facebookではラベルがつけられても米国を範囲に含めなければ広告出稿が可能)。
短くはない記事だが、様々な事例から説明されており、自分としてもとても面白く読んだ。ただし英語の書き方が冗長で回りくどく、カンマでだらだら文章を繋ぐいわゆるイギリス方式なので(偏見かもしれないが)、結局何が言いたいのか文意の把握に苦労した部分も多い。翻訳ということで大幅な改造は行わないが、伝わりやすさを優先していること、あまりに回りくどい描き方は簡略化している部分があることはご了承いただきたい。
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本文で明確には触れられていないので補足すると、ここで登場している記者インフルエンサーたちは西洋的な基準で言って、必ずしもフォロアー数が非常に多いというわけではもない。またせっかく身分をごまかしてまで広告を出稿していいねやフォロワーを稼いでいるのに、その方法論はかなり稚拙に見える。これは以前紹介した記事「中国の偽Twitter垢は誰もいない虚空に向かってつぶやき続ける」と符合しており、欧米系SNSの運用経験に乏しく、そしてインセンティブ設計が合目的でないことなどが原因として挙げられる。
そして本文で引用されているシンガポールStraight Timesの記事でも、「偉いひとはどうせVPN持ってないから見られもしない」と、中国あるあるな監視や懲罰脅威の有無が行動を左右してしまっている様子が証言されている。これも中国にはよくある話だが、目先のインセンティブに必要以上に影響され、プラットフォーム側のペナルティを逃れるためのある程度の対策(これはおそらく広告予算の消化が運営ノルマであり、ペナルティを食らうとそれが不可能になるため)は打たれているものの、そもそものゴールであるはずの「中国のナラティブを広げる」ということを達成すること自体には興味がない、というより「それは偉い人のノルマだから俺関係ない」と思っているのだろう。
中国共産党アジェンダにおける個人ブランド
Personal Brands for Party Agendas (2022/1/7 CMP, Kevin Schoenmakers)
政府のナラティブをより確実に海外に広めるために、中国国営メディアは、TwitterやFacebookなどのSNSプラットフォームにおける従業員たちの個人アカウントのより「柔軟でパーソナライズされた」使用を奨励している。SNSアカウントはどういった時に個人的なものに、あるいは彼らはどういった時に自らが奉仕する国のアジェンダへの関与に関して不誠実な態度をとるのだろうか。
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西側のSNSプラットフォームでミャオ・シャオジュン(缪晓娟)のプロフィールに出くわした人は誰でも、次々に国中の遠く離れた地域を訪れ、多くの時間を意義深い過ごす中国のジャーナリストの生活を垣間見ることができる。
一見すると、ミャオの視点と経験は主に個人的なものに見える。彼女はTwitter上のプロフィールでは自分自身を単に「ジャーナリスト、プロデューサー」と書き、同時に北京を拠点とする「中国国民」であり「地球市民」であるが、「(常に)新しい場所と挑戦に挑戦している」と付け加えている。Facebookでは彼女は単に「中国のジャーナリスト」としている。その投稿も人気があり、50万人以上のフォロワーを獲得しているようだ。これは、ほとんどのジャーナリストにとっては個人としては夢のようなリーチだといえる。
しかし、FacebookやTwitterなどのプラットフォームを通じて中国が世界規模で中国の言説に関する影響力を行使、あるいは偽情報をまき散らしたりする試みについての議論を踏まえると、ミャオの中国国外SNS上での存在感はミスリーディングなものだとわかってくる。SNSアカウントはどういった時に個人的なものに、あるいはどういった時に彼らは自らが奉仕する国のアジェンダへの関与に関して不誠実な態度をとるのだろうか。
ミャオは、西側のSNS上で活動している多くの国営メディア所属中国人ジャーナリストの一人でありながら、誰のために働いているかについては言及せず、表面上は単に党のアジェンダをうのみにしている個人のアカウントであるかのように装っている。そしてこうした行動は、「対外的なプロパガンダ実施のために『個人ブランド』の曖昧さを利用する」という公式に述べられている(政府・党の)戦略にも合致している。またこうしたジャーナリストの何人かは「偏見のフィルターを通さない中国を紹介する」と称した内容をTwitterやFacebookの広告機能を使うことで広めている。本当の雇用主をあいまいにした上でのこうした行為は、プラットフォーマーの誠実(透明)さに対する人々の要望を裏切る行為だと言えるだろう。
変更されるプロフィール
ミャオは政府系通信社、新華社が制作する”China Chat”という番組のホストだ。番組では日常的に、多くのプロのジャーナリストを落ち着かない気分にさせるような方法で政府への賞賛を強調している。 たとえば上海を拠点とする広報担当者が博覧会の会場で「中国について常に印象に残っているのは、国の支援を受けているこうしたトレードショーです」と、述べる。「これは政府が経済を推進するために、この種の商業的イニシアチブを実際にどれだけ後援し、支援しているかを本当に物語っていると思います」その直後、別の人物が「ここで我々は中国政府がいうドアは開け放たれている、がどういうことなのかを目にしています」と賞賛を重ねる。
TwitterやFacebook、およびその競合他社はSNS上での中国国営メディアのリーチを制限する取り組みを強化している。 CMPによる以前の調査では、広告機能へのアクセスの制限を含むTwitterによる国営メディアへのラベリングは、こうしたコンテンツの流通量を引き下げている。しかしより詳しく見ていくと、国営メディアの従業員たちは、雇用主との明白なつながりによって注目されることを避けようとしながら、いまだ政府の見解を拡散し続けていることがわかる。
Internet ArchiveのWayback Machineによれば、少なくとも6つのケースで中国の国営メディアジャーナリストがSNS上のプロフィールから雇用主への言及部分を削除していることがわかる。上述のように”China Chat”のコンテンツを日常的に宣伝しているミャオのTwitterの自己紹介もまたかつては “@XHNews editor”、つまり新華社の従業員であることを明らかにする形で始まった。しかし過去2年間のある時点で、このTwitter上でのジャーナリズムの透明性における基本的な行為は姿を消した。
同様に、国営放送局CCTVの国際部門であるCGTNの米国特派員Wang Guan(王冠)は、 Twitterで自分自身を「TVホスト/ジャーナリスト」と表記している。彼のプロフィールもまた以前は“Anchor, @CCTV @CGTN.”だった。フォロワーが比較的少ない彼の同僚のTianWei(田薇)とCaoBing(曹冰?ちなみにCGTNでは珍しい気もする日本語使いらしい)も同じだ。ヨーロッパを拠点とする新華社の記者であるレン・ケ(任柯?)は、以前は「ベルリンにある中国の新華社通信の特派員」と自己紹介を記入していた。現在、彼のプロフィールにはただ「ヨーロッパの中国特派員」とだけ書かれている。
ニュースメディアで働く人々がSNSのプロフィールで自分の所属先を明確にすることは、一般的に西洋では倫理的慣行と見なされている。たとえばAP通信は「ソーシャルメディアガイドライン」の中で、従業員が「何らかの方法で自分のアカウントを仕事に使用している場合は、APに所属することを明確に示す必要がある」とする。従業員はユーザー名にAPという文字を含める必要はないが、プロフィール写真にはAPロゴではなく個人の画像を使用する必要がある。「しかし、自分のプロフィール上でAPのスタッフである旨を明確にする必要がある」とガイドラインには記載されている。
彭帥と言えば
ひょっとすると、誰に雇われているのか曖昧であった最も有名な国営メディアのスタッフは、11月に中国のテニススターである彭帥が微博への投稿で、元副首相の張高麗を性的暴行で非難し消息を絶った後、彼女の幸福な暮らしぶりについての心配を和らげるための写真と動画を共有したCGTNエディターのShenShiwei(沈诗伟)かもしれない。シェンの投稿は、彭帥についての懸念を減らすためにアメリカのSNS上でだらだらと続けられた一連のキャンペーンの一部だった。
シェンの現在のツイッター上のプロフィールは、 2年前にはっきりと書いていた「CGTNの国際エディター」を省いた残りものの寄せ集めだ。
CMPによってプロフィールから所属先情報を削除したと特定された国営メディアの従業員の中には、Facebook、Twitter、またはその両方によって「中国国営メディア」としてラベリングされている人もいる。これこそが、おそらくここ2年の間に雇用主へ言及しないことを通じて彼らが避けたかったものだといえるだろう。
しかし一部のアカウントはラベリングを回避することに成功している。そしてこのような「レーダーの下を飛ぶ」行為により、プラットフォームを介して露出を購入すること、それによってアカウントがリーチを拡大することを可能にした。例えばTwitterでは、「国営メディア」のラベルが適用されると、有料プロモーションを利用できなくなる。またFacebookは米国の選挙プロセスを保護することを目的に、国営メディア関連のアカウントが米国のユーザーをターゲットにした広告を掲載することを制限している。だが選挙への外国の干渉の可能性に対する懸念に関する公の議論が同じレベルにまで達してはいないその他の国をターゲティングすることは禁止していない。
全体として、CMPによって特定された9人の国営メディアの従業員は、広告にお金を払うことによって、リーチの拡大に成功してる。たとえば、前述のミャオのキャッチ―なFacebookのフォロー数は、昨年1月のページ開設以来投下した約60の広告によって構築された可能性が高いことが、Facebookの広告ライブラリから読み取ることが出来る。
「世論戦争」をツイッターに持ち込む
ときには中国国営メディアのジャーナリストが自らを「中国国内では見れないSNSプラットフォームで活動するインディペンデントな声」であると発信し、それを国営メディアが「中国のナラティブをうまく伝える」(讲好中国的故事)イノベーターであると紹介することもあった。「讲好中国的故事」とは中国共産党が世界規模で進める中国の言説に影響を与えるための戦略を凝縮したフレーズであり、共産党はこれを通常「外部宣伝(外宣)」と呼んでいる。
新華社の記者である徐泽宇(シュ・ズーユー、あるいは本人のFacebook上での自己紹介の様に「中国人ジャーナリスト」、ただしフォロワー300万人の)は2021年5月31日の政治局の集団研究セッションのプライオリティであった「讲好中国的故事」戦略のエキスパートとして、中国のイメージを宣伝している((CMPの関連記事)。
2021年11月8日、中国ジャーナリストの日(記者節)を記念して、徐氏はCCTVに出演、中国に関する誤解に対抗するための外国のSNS使用について言及している。徐氏は番組中共産党の主張をそっくりそのまま繰り返す形で、中国が世界的な「世論戦争」に直面していると語った。彼は「国際世論の領域も一種の戦場であるといえるでしょう。この戦場には銃や弾丸、戦争の煙がないかもしれませんが、そこには正しいか、間違っているかの違いがあります」と述べている。カメラレンズを国のための闘いの武器だと語る彼は、武漢におけるCovid-19の流行の真っ只中でのファーストレスポンダーを称賛する英語の”vlog”報道に注目を集めるためにどのように外国のSNSを使用したかを説明した。
しかし徐のもう1つの武器は、彼の海外での支持を増やし、報道をより広めるために広告を使用したことであるようだ。彼はFacebookで25の広告を掲載しており、最新の2つの広告は今年1月4日に投下されている。これらの広告のいくつかは、2021年の春節期間における習近平国家主席の農村訪問など特定の公式ニュース記事に焦点を当てている。他の広告もまた中国社会に「異なるアングル」を提供するものだ。
徐の最新の広告では、北京冬季五輪のスキージャンプ会場の画像をシェアしていた。そのようなコンテンツは間違いなく無害だが、その背後にある広告購入は単体記事のリーチを広げるだけでなく、FacebookページやリンクされたSNSアカウントそのものへの注目を高める効果がある。従って、必要に応じて挑発的なコンテンツや偽情報のためのあからさまなチャネルになる可能性もある。
2021年12月10日、米国が民主主義サミットを開催する数週間前、徐はFacebookに、米国議会議事堂が火の山の上に置かれたモルドール風(訳注:原語は”Mordoresque landscape”で、おそらくトールキンの指輪物語の中のモルドールという国か?)の破壊の風景の洗練されたイラストを投稿した。「 『民主主義サミット』のサミット(山頂)に登る」とキャプションが入ったこの画像の紛れもないメッセージは、11月12月に国営メディアのヘッドラインを独占したテーマである米民主主義的価値観の虚偽と偽善に関するものだった。
徐のFacebookページのイラストは「Xu ZeyuStudio(徐泽宇工作室)」によるものだ。新華社自身が報告しているように、この工作室は2020年末に「アカウントコンテンツの計画と制作、および海外での有効な受容」のために「特別に設立」された。この工作室の設置により、「(新華社の)チームの力をより有効に活用」し、「部門を超えた協力を強化」することができるようになる、とのことだ。
Xu ZeyuStudioは、国際的なインフルエンサーとしての徐の立場を利用して、よりバイラルな形式のソフトプロパガンダを含む、党国家プロパガンダのより効果的な拡散を目的にしている。 2021年7月に国営報道機関の旗手である新華社傘下の出版社による雑誌「中国记者」に掲載された記事によれば、徐のような国営メディアジャーナリストの個人アカウントの組織的な運用は、明確に戦略として規定されているという。
その論文「Xu ZeyuStudio:パーソナルブランドを使用した海外世論闘争の革新(原題:徐泽宇工作室:用个人IP创新对外舆论斗争)」では、Covidの発生と同様に、2020年2月、つまり新型コロナが中国で最も深刻であったころに始まった海外SNSでのXuZeyuの個人アカウント運用が急速な成長発展を遂げ、「工作室」として結実するまでについて詳しく解説している。そして海外のSNSで活動する幅広い人々や機関との徐のつながりをマッピングしたうえで、「外宣」の効果的な戦略として、「独立したネット民(つまり党・政府と関係するか、少なくとも親和的な考えを持つ知名度の高い個人のこと)」の「パーソナルブランド(個人IP)」のより多くの利用を提唱している。
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先月の新华每日电讯でも引用されたこのような「コミュニケーションの共鳴」の一例として、Xu ZeyuStudioによる別のきらりと光る風刺がある。それは民主主義サミットをホグワーツ魔法魔術学校での組分け帽子の儀式に例えることで風刺したイラストで、多くの魂が暗闇を漂う様子でアメリカの民主主義の嘘を表現している。
この記事では、海外SNSの新華社傘下のXuZeyuStudioのアカウントで投稿したところ、外国ネット民から200万以上のビュー、4万以上のいいねがつき、彼らは活発にこの漫画のシンボリックな意味あいである「民主主義のサミット」について語り合っていた、と紹介されている。
インフルエンサーたちの入札
Xu ZeyuだけでなくCGTNの従業員であるSerena Dong、Li Jingjing 、Wang Guan、Jessica Zang、Rachel Zhouも、Facebookページの有料プロモーションを実施しており、合計で約600万人のフォロワーを獲得することに貢献している。
2021年1月にTwitter社のAds Transparency Centerが閉鎖されて以降、有料投稿の追跡は困難になった。しかし未だラベルがつけられていない2人の新華社の従業員、つまりヨーロッパを拠点とする新華社の記者であるRen Keと彼の中国を拠点とする同僚のLiu Fangqiang は「Twitter for Advertisers」を通じてプロフィールの広告を掲載、あるいはプロモツイートを投稿したようだ。
1年前、Renは「中国に関する独自の見解と情報を提供します。フォローしてください。」というツイートを広告によって拡散し、600件以上のリツイートと7,000件以上のいいねを獲得した。 2021年8月に、Liu Fangqiangもまたフォロワーたちに西側の主流メディアが取り上げない中国を紹介するというツイートを広告によってプロモートした。
これらの広告に惹かれるSNSユーザーは、中国政府のメッセージからそう遠く離れていないコンテンツを見ることになる。冒頭のミャオのチベットと新疆への旅行に関する投稿は、この2つの地域で広く報告されている人権侵害が発生していないかのように、セルフィ―とグルメ、あるいは旅行そのものにフォーカスされている。徐の最初のFacebookアドは、香港における国家安全保障法を明確にポジティブな進展として宣伝していた。
上記のようなアカウントの活動の多くは個人の考えの反映としての活動として解釈することが可能だし、その活動のいずれも違法ではない。しかし実際の所、徐の海外SNSに関する新華社自身の紹介が明らかにしているように、個人としてのプレゼンスと党のアジェンダを混ぜ合わせることが彼らの戦略であることは明確だ。
シンガポールのStraits Times は昨年7月、上記の3人の国営メディア従業員(CGTNのLi Jingjing、Jessica Zang、Rachel Zhou)が、国営放送局によるインフルエンサー育成プロジェクトの一部であったとレポートしている。記事は現在および元のCGTNスタッフへのインタビューに基づいて、そのようなインフルエンサー育成を目的とした「インフルエンサースタジオ」が放送局内に設置されたと報告している。
CGTNは、党によってコントロールされているメディア企業を統合する形で2018年に設立されたコングロマリット”China Media Group (CMG)”の一部だ。 2021年6月、グループのトップである慎海雄は、「中国のナラティブをうまく伝える」という新たなブレークスルーを模索するために、「多言語のインフルエンサーのためのスタジオ」の創設を呼びかけた。慎の呼びかけの直後に発表され(そして新華社の内部関係者によって書かれた)「中国記者」掲載の論文(訳注:明示されていないが上記の”徐泽宇工作室”に関するものを指すと思われる)が明らかにしているように、その重要な戦略の1つは、距離があると装うことは維持しつつも、一党制支持という論点を拡大するのに「パーソナルブランド」をきっちりと活用することだ。これが意味するのはおそらく、インフルエンサーがCGTN、新華社、またはその他の国営メディアで働いていることに言及しないということだろう。
中国共産党の厳格な世論統制に直面している中国の国営メディアは常に従業員の個人的なSNSカウントの管理に真剣に取りくんできた。CMPが閲覧した2014年に配布されたある国営メディアグループの、従業員によるマイクロブログの使用に関する以前の内部ガイドラインには、「(ニュース)スタッフは、ブログ、マイクロブログ、 WeChatやその他のSNSアカウントを開設する前に申請と承認、ファイリングが必要」とされ、そして「彼らの作業単位は、彼らに対する日常の監督と管理に責任を負うものとする」と記されている。ガイドラインは、総務部門に「方案公示制度における個人のマイクロブログの統合管理を担当する(訳注:すみませんちょっと意味わからないです)」責任を明示する以外に、各チャネルに「連絡担当者」を指定し、責任者が個人のマイクロブログでの行動を管理および指導するサポートを行うようにと指示している。
ガイドラインからは、国営メディア自身がSNSでの従業員の活動を日常の監視の重大な問題と見なしていること、および定期的な監視、執行、および懲戒のためのメカニズムが長い間実施されてきたことを明らかにしている。習近平自身が前任者よりも強調しているように、国営メディアを通じて適用される党による世論統制が厳格なのであれば、国営メディア従業員によって国内では禁止されているはずのプラットフォーム上で運営される個人SNSアカウントの独立性は何を意味するのだろうか(訳注:要するに「当然独立性などない」事を暗示しているのだろうが、回りくどい…)?
当然のことながら、国営メディアとの親和性は必ずしも、それぞれのジャーナリストが党の「国際的なディスコースパワーを増大させる」という信念への共鳴に基づいて、つまり自発的・個人的に中国にまつわる世界的なディスコース(言説)に対抗している可能性を否定するものではない。新華社の記者であるレン・ケ氏は昨年9月にツイートし、次のように述べている。「多くの自称エキスパート、ジャーナリストが中国に関するゴミみたいな内容、フェイクニュース、偽情報を流している、おぞましい!」そして 「もっとツイートしなければならない」と彼は付け加えた。しかし、彼もまた、外国人を説得する最善の方法は、彼が誰のために働いているかを隠すことであると判断したようだ。