済南、インターネット検閲の新しき都(翻訳)

先日、敬愛する水彩画さんに教えていただいたこの件。

非常に興味深いながらにちょっと時間の関係もあり、触れられずにいた(いる)。むしろ機会を見つけて現地に飛びたいぐらいなのだが(まあ歩き回っても何かわかるわけではないし、写真なども危険ではある)、取り急ぎ削除されたとされる南方週末のこの記事を翻訳して残したい。

文中で紹介されている審査チームの所在(头条は明確な記述がないが、オフィス所在地が文中の「東」という記述と一致のため)。別窓でひらいて読みながらどうぞ。

済南、新しきインターネット検閲の都

出典:济南,新的互联网审核之都(南方週末 3/25→転載)

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三月中旬、済南日報はヘッドラインでひとつのニュースを紹介した。それは「済南市委書記王忠林が人民網を訪れ、双方は戦略合作の協議にサイン、同時に済南市に人民网信息技术有限公司が成立した。人民網総裁の 叶蓁蓁は済南での戦略的な協業について” 建设共商、共建、共享、共赢的内容审核平台 “と述べた(訳注:なおこの件は人民網自身が記事にしており、今も閲覧可能)。」

この協議の核心は、人民網が済南に新しいコンテンツ審査プラットフォームを建設中だという事だ。

人民網の業務構成の中で、コンテンツ審査はコア中のコアの業務と言ってよい。公告によれば、第三者コンテンツの審査業務は2018年、前年同期比で166%成長しており、これは同社のあらゆる事業セグメントの中で最も成長率が高かった。

このような重要な業務を済南に配置するという事は、人民網にとってはひとつの大きな決心だった。公開情報によれば、 人民网信息技术有限公司は済南市中区緑地中心に位置し、法人は潘健だ。人民網のウェブサイトの経営層紹介のページによれば、潘健の現在の肩書は人民网党委委员、副总编辑,曾兼任人民日报媒体技术股份有限公司副总经理だ。業界関係者によれば、済南市中区はこのためにオフィスを含む多くの優遇措置を提供したという。

人民網も済南に審査機構を作った初めてのインターネット企業というわけではない。それ以前に一点资讯、凤凰网、最右など多くのネット企業の検閲チームが済南に拠点を作っている。済南地区の検閲編集の総数は既に5000人近くになっており、我々が見ることができるニュース、記事、ビデオ、写真、小話などのコンテンツの大部分は済南を通ったうえで我々に届けられることになる。

あるいはこのように言う事もできるだろう—–済南は、インターネット審査の都になった、と。

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2015年にオープンした济南报业大厦は槐荫区の西客駅の近くにあり、済南南西部を代表するランドマークと言える。毎日朝から晩まで胸に社員証をつけた若者が忙しそうに行き来する。しかし彼らの大部分は編集記者ではなく、インターネット企業の審査担当だ。

凤凰网新闻の监控中心(ニュースモニタリングセンター)と一点资讯の審査部門はいずれもここにあり、スタッフの数も少なくない。鳳凰は1フロア、一点资讯は2フロアを占めている。

2016年7月、 凤凰网新闻监控中心は済南日報报业集团と協業し、正式に済南にオープンして济南报业大厦に入居した。これがおそらく有名ネット企業が審査プラットフォームを済南に置いた最も早い例だろう。

同じように、 済南市の南東部、东环国际广场には最右APPの審査チームがいる。これは若者向けのジョークの小話を投稿するアプリで、北京に本社があり、業界内でも知られている。

人民網の審査チームは 济南市市中区的绿地中心にある。ここは市の中心の最もいい場所で、現時点で済南市の最も高い建物で、高層からは千佛山を望み,大明湖、五龙潭、趵突泉,山、泉、湖环绕などを見下ろす事ができる。ここから15分車に乗れば、山東テレビだ。

地理的な位置からみて、今日头条は東にあり、一点资讯と鳳凰は西にあり、人民網は真ん中、多くのコンテンツ審査機構は済南の伝統メディアと同様にすでに東西中という布陣をつくりあげている。

審査チームが大量に進駐することで、少なからぬ伝統メディアの人々や、多くの山東省の大学卒業生が加わった。 特に新卒にとってはたとえ核心的な部門でなかったとしても国内で有名なインターネット企業に入ることができるのであれば なにせ何百もの地位が用意されているわけだし、自らを鍛え向上させるのにはとても良い、試してみようというわけだ。

済南のとある大学のニュース専攻コースの教師によれば、多くの卒業生はこうした審査部門を第一志望にしないだろうけれども、もっとやりたい仕事を見つける前の、或いは大学院を受ける前の実習として、悪くない給料をもらえるこうした会社はみなの選択肢の中にはいるだろうと述べた。今日头条で実習を経験したことがある一人の卒業生によれば、チームの雰囲気はとてもよく、若者は実際よいトレーニングを受けることができるという。「でも、確かにこの仕事の人材流動性は高いと言えます。私のクラスでは卒業後6人の同級生がこうした審査の仕事につきましたが、いまもまだ働いているのはその内1人だけです」

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ある山東省のベテランメディア業界人は、「審査チームを済南に置くのは、相当計算の上だろう」と語る。

まず、済南市には大学が多い。山东大学、山东师范大学、济南大学、山东财经大学、山东政法学院等50以上の学校があり、つまり新卒の供給源として十分だ。次に、山東人は仕事に対して真面目で、職位ともマッチし、部屋の賃料と給与のバランスから考えると、済南は北京よりも相当恵まれていると言える。また、北京と済南は高鉄であれば2時間以内の距離で、本社に行くのも比較的便利だ。そして当地でそれなりの優遇措置が取られれば、コア業務でないチームをここに置くことは、非常に合理的なのだ。

もうひとつ、山東人の堅実な気質だ。業界内部関係者によると、こうした人材の流動性が比較的高い審査という業界において、ここでの流動は比較的緩い。

しかし、なぜ別のものでなくコンテンツ審査なのか、それについても山東人の伝統と関係がある。

齐鲁(山東の古名)の大地 は、 德州(德克萨斯=テキサス州ではない)、滨州(宾夕法尼亚=ペンシルベニア州ではない)、东营(东瀛=日本ではない)という世界的に有名な場所がありながら、儒教の影響が強く、山東人の政治、官僚、体制への熱狂は全国の上位に冠せられる。

山東は人口が多いが公務員もまた多く、それは全国からも強い印象をもって認められている。公務員になって体制の中に入る、国有企業に入るというのが長い間山東人の標準的な人生だった。だから多くの「山東人が地元に帰るための指南」本の中によく書かれているのは、もし誰かの家の子供が北京に行って公務員をやらないなら、年長者から見れば基本的にいい加減に暮らしているとみなされるといったことだ。
例えば山東省でレストランに座る時の席次表はよくネットの自媒体記事のネタとして使われる。あまりそこまで意識されることはないが、主賓、ホスト側のトップを始めとして非常に厳格な席次があり、それは山東人のこうした社交を重視する姿勢を表している。

とあるメディアによると、時勢の報道に最も興味を持つ省は山東、北京、広東がトップ3だという。また鳳凰網の調査によれば、他の省に比べて山東省の読者は国家の大事に対する関心が最も高いという。2016年、 山东省新闻出版广电局が発表した調査結果によれば、山東省の人々の最も好む内容はこれも時勢のニュースだったという。

ニュースに関心が高いというもうひとつの証拠は、ここはニュースメディアが最も密集している地域であるということだ。

他地域のメディア人にとって想像しがたい事に、済南は実は新聞の発行部数が大多数の他の省の省都よりも多く、山東省はスマホニュースの閲読量も全国トップクラスで、他の例えば 闪电新闻、齐鲁壹点、新时报、爱济南、海报新闻、速豹新闻、山东24小时といったニュースアプリが非常に激しい競争を行っている。他のひとつの街に1つのアプリしかないような街からすれば、こんなにも多くのアプリが一つの街に存在しつづけられる事は想像すらできないだろう。しかもこれらは、メディアの下部にぶら下がっているわけでもないのだ。

このようなメディアの雰囲気は、求めて手に入るものでもない。

山東人と会食をする時、もしあなたが政局についてまったく知らないとしたら、かなり気まずい事になる。大体山東人の雑談というのは公務員の人事情報から大きな政治を語るというのが常なのだ。一般的にはこんな感じだ。

「XX市のXXXというやつは聞くところによるとなかなかやるらしい」
「そうそう、ただ二番手は彼とあまりうまく行ってないとも聞く」
「二番手ってXXXだろう?以前異動で出ていかなかったか?」
「まだだ、聞くところによるとまだ正式に批准されていないらしい」…

あなたがもし公務員試験の注意事項、省の事業単位が最近精神文明ボーナス(訳注:宣伝部などの「精神文明委員会建設委員会」などに申請して決まる)をどれだけ支給したか…といったことをもし知っていればようやく皆の話題についていける。もしあなたが芸術とかその他の話題で雑談をしたいとすると…申し訳ない、みな変なものを見る目であなたを見ることになるだろう。

山東省においては、小さい子供であっても「 新旧动能转换 」といった政治的な言葉に精通しているのだ。

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インターネット企業の受け入れは、山東側の焦りが原因でもあった。

2019年の春節が終わり初めての出勤日、山東省では、「 担当作为、狠抓落实 」をテーマにした大会が行われ、省委員会書記の刘家义がスピーチを行い、テレビドラマ 《亮剑》の中の“李云龙式的干部(訳注:見ていないので正確にはわからないが、おそらく優秀な人材の意味)” を抜擢するように命じた。

ちょうど1年前、同じような大会において、 刘家义は「もし山東省の発展方式が旧式のままで、産業構造もありし日のままであったなら、永遠に発展の大きな流れには乗れないだろう」と発言していた。

この情報量が非常に多いスピーチの中で、刘は明確に「山東省が後れを取っている」という警告を鳴らしている。

当時、多くのメディアが「山東省がついに自分たちの遅れをみとめた」といったタイトルで山東の焦りを報じた。そして今年、メディアが使うのは「山東は焦っている」といったものになっている。

そしてもうひとつ細かいが重要な事として、18年にこの会が開かれた時、刘が山東省から生まれたインターネット企業の数の少なさを嘆いた。彼の元々のスピーチ内容は「全国インターネット企業TOP100の内、山東省企業は2社しかない、しかも順位はともに60位以下だ。 滴滴打车、支付宝、微信红包など業界を引っ張るイノベーションを起こした企業はどれも山東省からは生まれていない」

大手だけには限らない。山東省は全国で3番目の経済規模にも関わらず、2,3銭級のネット企業でさえ非常に少なく、全国における経済規模の地位とまったく釣り合いが取れていない。

済南市にも、同じく焦りがある。

ある省都の「首位度」をはかる際、一般的には省都のGDPと省都以外で最もGDPが大きい都市のGDPを調査する。副省級の都市でもある省都済南は、この首位度の低さに悩まされていた。GDPは長きにわたって省内の三位で青島、煙台に後れを取ってきた。17年、済南市の首位度は0.65で、これは全国27の省都都市のビリで、南京を下回っている。

2017年2月、山東省委員会常務委員、済南市委書記の王文涛は「省都として、済南はかなり気まずい状況に立たされている」と直接的に言った。

18年、済南市のGDPはついに煙台を越え、省内で2位になった。19年、 莱芜と合併した事は、多くのメディアからは山東省が強い省都を作ろうとしていると捉えられた。そしてその首位度はついに、南京を超えることができた。省都として強い地位を持った済南を作るのであれば、自然とインターネット企業に食指を伸ばし、多くのネット企業が進出しなければならない。そうすれば都市のソフトパワー面での実力が大きく上がる事は疑いのない事だろう。ネット企業側からすると、人材リソースが十分にあり、優遇措置があるのであれば、チームをここに派遣するのに何を迷う事があるのだろうか?ということだ。

メディアと地方政府がお互いに引き寄せあい、力を貸しあうのは、すべて時代の流れということができるだろう。済南にとっては、メディアの大きな流れは既にきたのであり、この街のインターネットのストーリーは、まだ始まったばかりなのだ。

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