党報は如何にして市場化の道を歩むのか

2018年は改革開放から40年とされ、各地でイベントが開催されている。この40年で中国は多くの部分で非常に大きな変化を遂げ、一部では西欧諸国を追い越す発展を果たしている。

その変化の中にはメディアの変化も含まれる。特に、経済の自由化によって一定の範囲の経営自主性を与えられた新聞社の変化は、ある意味でその代表だとも言える。
今日の文章はその党報の経営面での現代化に関するものだ。自己変革を試みている党報の、それでも高い政府依存率などが比較的具体的に描かれている。特に多角化の部分などは日本の新聞社やテレビ局が事あるごとに「不動産屋がついでにメディアを運営している」などと口さがなく言われる状況と非常に似通ってもいて興味深い。

党報の改革にはもうひとつの、もっと本質的で重要な側面がある。それが内容の変革だ。それは「セントラルキッチン式」という独自の興味深い方式につながっていくのだが、それは次回以降紹介していきたい。

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党報は中国メディアの特異性のアイコンのひとつだと言える。共産党の各層によって発行される「党の新聞」党報は、事実上の国営新聞と化しているという意味で中国の共産党と政府という複雑に入り組んだ二重の政治体制をよく表している。人民解放軍が実は名義上は国軍ではなく共産党の私兵である、という例はこれを説明するためによく出される。

文中にも出てくるが、中国のメディア(特に今回テーマになる新聞)は1942年に毛沢東が「ニュースメディアは党の喉と舌」と規定して以来、独立した番犬としてのジャーナリズムではなく、党(そしてその次に政府)の意向を下々に向けて通達する機能として、生存を許されてきた。規模が大きな人民日報を我々の感覚での全国紙のように捉えている人もいるようだが、本質的には日本で考えれば日本共産党の「赤旗」や自民党の「自由民主」でしかない。であれば、そこで発行元を批判することが現実的でないことは誰にでも想像ができるだろう。

そもそも読者の関心ではなく発行元(=党)が伝えたい情報を伝えるメディアである党報は、当然の帰結としてその収益の大部分を政府に依ってきた。しかし90年台に改革開放が起こり広告が解禁されるとともに、新聞社グループはある程度の自主経営を求められるようになった。そうした変化がもっと読みやすい、読者ニーズに応じる形でのタブロイド紙である都市報の創刊などの変革につながってきたのだが、それでも新聞社は義務として党報を発行しなければならない事には変わりない。

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党報は如何にして
市場化の道を歩むのか

出典: 【大家】党报如何“走市场”? (腾讯大家专栏 2016/1/4)

改革開放以前は、党報は市場に立ち入る必要はなかった。党の喉と舌という機能を担いながら、党からの全額の補助金を受け取っていた。しかし80年代から党報も「事業属性による企業化」を進めることとなり、広告を出し、イベントを行い、経営を行うという一般的な企業に変貌していった。そして現時点では、少なからぬ省級の党報は自分の収益に責任を持つようになり、いくつかの党報の広告収入は1億を越え、利益もまた1000万に達した。表面上、党報の市場化は成功したといえるが、深く研究していくと、そこには濃厚な政治の香りが漂い始める。

まず、各部門への割当が党報に収入の基盤を提供している。

いくつかの中央級の党報は全国規模で発行されその収入が保証されているため、生き残ることを心配する必要はない。省級の場合は、各レベルの行政機関の予算による購読に頼ることによって、30-50万程度の発行量を保つことができる。筆者は中原にある省級党報を視察した際、ある新聞社社長から、実際には人口が多い省であっても、実際は20万少々の発行量程度にしかならないにも関わらず、A省の何々新聞、B省の何々新聞がみな50万も出されているという話を聞いた新任の書記が来年から必ずこの数字を達成するようにと言う指示を出し、結果として本当に宣伝部門が「二倍にしろ」と支持を出し、新聞社中の人が大喜びで走り回ったという話を聞いたことがある。

次に、政府は党報を完全に乳離れさせているわけではない。

政府機関のために宣伝に従事するからには、メリットもある。一般的に、党の宣伝部門は省級党報に対して、毎年2000万元程度の予算を渡す。近年では某北方の非常に重要な都市の党報は1億元を越えているとも聞く。もしそれが本当であれば、最近になってもこのメディアが主流意識をよく保ち、米帝の「普遍的価値観」を批判する上において重要な貢献をしていることも頷ける。

みっつめに、収入構造から見て、やはり政府関連が大きな割合を占める。

党報の収入構成上、紙面発行による収入を除けば、その大部分が政府部門や国有企業だ。例えば、政府部門の公告(国土局の土地売買に関するもの、電力局の停電通知などなど)が大きな広告収入をもたらす。また各レベルの政府部門が出す「软文(訳注:日本で一般的にノンクレタイアップといわれているものに近い、記事の形式をとった広告)」は一般的には专题という形式で、写真も文章も盛りだくさんで政府改革の成果と素晴らしさを説くようなもので構成される。多くの党報支局責任者は報道に加えてこの软文の取扱という二重の任務を背負うことになる。

软文は、本質的には一般的な意味でいう「広く公衆に報せる」というメディアの位置付けのためではなく、組織上の上司に「素晴らしい成績を報告する」といった性質のもので、省の党委員会の上層部に下部組織の執政の成功を伝えるためのものだ。
このような「広告」にとって最も輝かしい瞬間は毎年の「两会」の時期で、「省委書記が見るかもしれない」という追い風で各レベルの政府機関に出稿を促すことができる。筆者が聞き及んだところによると、两会の時期の価格は全面広告が1ページで30万元、3つの全面広告と一面への掲出(ただし、一面にはタイトルとリード文のみの可能性もあり、その他は他の面に掲載される)=100万元をセット価格としている。他にも、とある県級の党報はその下部級の行政機関との協業により、年間200万元の安定収入があるとも聞く。

いくつかの党報は専門の業務部門を設立、もしくは外部のサイトに依頼して世論監視・監督業務を行っている。これは主に各レベルの政府部門、もしくはその上層部にあてたものだ。主に世論動向のレポート、分析と対策などだ。それ以外にも、党報はそのウェブサイトも各レベルの機関(特に県級機関)との協業が多く、行政機関のサイト制作・運営・管理などで数百万元の収入を得ている。

例えば、県政府に代わってサイトを設立する場合、10万元程度の費用が必要になる。そしてそのサイトを党報の重点ニュースサイトとすることで、毎年さらに10-20万の運営収入が発生する。このような県級のサイトは独立した編集機能は持たないため、省級のニュースサイトと協業することにより、その機能を得る。そうして、党報のサイトは毎年10万元前後の管理費収入をコストなしに得ることができる。

4番目に、営利活動も多くの部分を行政機関に頼っている。

多元的な収入を得るために党報もさまざまなイベントを行うなど、政府部門、国有企業などと協業する「マーケティング」によって収入を得ている。例えば大气で高級感のある座談会・討論イベントを開催し、有名人や政府関係の上層部を招待しその場で地方政府を宣伝したり、それを特集として報道したり、その他にも地方政府の部門のトレーニングを共催したり、その成果を報道したりすることで政府のトレーニング予算を党報の収入とすることができる。

また業界訪問やランキングの発表、博覧会の実施などのイベントを実施し関係部門を「指導単位」として招聘したり、省委の上層部を「組織委員会主任」としたり、また知名度がある専門家や学者を「専門コメンテーター」として呼ぶといった形で国有企業や政府へのマーケティングを行う。様々な紙面に広告を出稿した場合どのようなリターンがあるかが重要で、「~セレクション」「賞」「展覧会」の背後には政府の協賛や上層部の受賞などがあり、党報はそれによって金を稼ぐこともできる…つまりwin-to-winだ。

5番目に、産業への投資もまた、多くを政府に依拠している

多くの「新聞は死につつある」という人は中国の国情を理解しているとは言えない。党報は基本的に生死の問題について心配する必要はない。もし単に広告や販売収入に頼る必要があるならもちろん党報はそんな安穏と暮らすことはできないだろう。
しかし、このメディア環境の激変の中で党報はその業務を多角化させ、それが結果として現在多くのリターンをもたらしている。それは例えば少し不便な場所に「报业大楼」を建て編集部をすべて移動させ、残った元々の繁華街のビルを「文化基地」やビジネスホテルに改装して貸し出すことでその収入で編集のコストを賄ったり、逆に偉い人の口利きにより非常に便利な土地を入手して“文化综合体”や“文化创意园”、実際には単なる不動産、を建設し利益を得たり、政府を通して高速道路の広告や屋外広告などの独占権を得るなどで安定した収入を得ることができる。

上述のような現象を見て、「党報が市場への道を歩むというのは、結局のところ政府へ歩み寄っているだけだ」と言う人もいるだろう。しかし政府が最大の(市場の)老板であるからには、政府に歩み寄っていくこともまた、市場化に向けた歩むための最高の道だともいえる。
党報はある種の市場の独占者であり、都市報は自由市場でもがき苦しんでいるのが現状だ。過去、都市報は最も収入が多く、(訳注:党報を抱えた)新聞社グループの収益の大きな柱だった。しかし都市報は次第に最も難しい局面を迎えつつある。その状況で党報は都市報に「恩返し」できるだろうか?これこそが問題である。

 

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