翻訳:誰がpapi醤を殺したか

つぶやき一発数億円といわれ、一世を風靡した中国ネットアイドルpapi醤。ここ数ヶ月は本人初のコンテンツはおろか記事の中での言及ですら目にすることもなく、ちょっとしたオワコン感が漂っている。よくいる明らかな一発屋と違い、彼女は顔立ちが美しいだけではなく機転も利き、しかも演劇の専門教育を受けている(北京の中央戏剧学院という、チャン・ツイィーなどを排出した名門校出身)。それでもやはりネット発の一発屋にしか過ぎないのだろうか?

そんなことを考えていたときに読んだ記事を今日は翻訳して紹介する。題して、「誰がpapi醤を殺したか」。新しい情報が多く含まれるわけではないが、よくまとまっている。ネットアイドルが本当の芸能人(スター)になることの難しさ、まともな育成の仕組みがなく地力がないため一瞬当たっても一発屋で終わってしまいがちなど、日本とも共通することが多い。

なお中国のネットアイドルビジネスについては実は媒体掲載用の原稿を用意しているのだが、運悪くかなり似たテーマの取材記事が他媒体に露出してしまったためお蔵入りした。タイミングを見て紹介できればと考えている。

 

誰がpapi醤を殺したか

出典;广告营销圈(微信公众号 2017.5.26)

好事魔多し、有名になればそれだけ妬まれ、悪いこともある。この言葉は「知恵と美貌を兼ね備えた」papi醤には似合いすぎるほどだろう。最近発表されたショート動画のランキングの中で办公室小野がpapi醤を越え、いくつかのメディアではpapi醤はもう駄目だと結論付けていた。

この結論はかなり乱暴だ。マーケティングやPR会社の持つ価格表を見れば、papi醤は依然として広告主に支持されていることがわかる。しかしデータを仔細に見ていくと、ユーザの注目が急激に落ちていることもまた、確かだ。2016年の最も支持された网红(ネットアイドル)だった彼女はいかにしてその玉座から降りることになったのか。papi醤とそのチームはどのようにしてこの状況に対抗していくのだろうか?

papi醤がアイドルになる道は、どのようにして勢いを使って自分の城を築くか?

百度のデータによれば、papi醤の検索量は去年の2月から増え始め、4月には17万以上のピークになった。しかし7月から下降をはじめ、目下の平均検索量は4万にも至らない。すでに爆発的な増加が起こる前の数字に近づいている。

 

微信において、papi醤が公開する記事の閲覧量は直近も10万以上を保っている。しかしイイネ数は急減しており、昨年同期には2万程度あったものが、現在では1万以下になっている。

 

ネットアイドルは遅かれ早かれ煙のように消えてしまう。これはもう必然のようなものになっている。papi醤の人気が爆発する前にいた、“国名校草”、“武大女神”、“人大女神”、“小葡萄”、“小月月”、“南笙”…覚えているような、思い出せないような…以前天涯、人人网、微博などのSNSをかき回し、話題になったネットアイドルはいずれも流星のようなもので、最後にはみなに忘れ去られてしまった。

どのようにタレントとしての寿命を延ばすかという点については、芸能界のスターは非常に参考になるだろう。陈楚生、何洁、薛佳凝、付辛博、陈好などといったスターのピーク時の注目度はネットアイドルの大Vには及ばないかもしれないが、その個々人の背後には成熟した産業としての生産過程があり、成功した人が持続的に成功し続ける仕組みがあり、それによって安定してファンを養成することが出来、また一定程度みなに覚えてもらうことが出来る。それが個人ブランドを長生きさせる基礎になるのだ。

攻め込まれない防壁を築くためには、まずスターになる必要がある。papi醤もスターになりたかった。彼女の最近の一連の活動は、スターになるための過程を示している。欧莱雅,闲趣,汤臣倍健などへの広告出演の後、またスイスの有名時計メーカーやNew Balanceのイメージキャラクターも努めている。それ以外にも映画業界にも進出を試みており、《七月与安生》で知られる香港の監督曾国祥の《玲姐大闹萌贵坊》の脚本を担当するとともに、友情出演も果たしている。

しかしネットアイドルとスターの間の距離は、そう簡単に飛び越えられるようなものではない。papi醤が出演したスイスの高級腕時計ブランド、ジャガー・ルクルトの広告は、多くのPVを稼ぎ注目されたものの、同時に「割引された腕時計をつけてるような気分になった」といった評も生まれた。しかしBurberryの吴亦凡、カルティエの鹿晗、ゲランにおける杨洋など、同じようにラグジュアリーブランドのイメージキャラクターを努めるスターにはこういった悩みはない。ブランドのファンに言わせれば、ネットアイドルとスターの間には大きな差が存在するのだ。

では、papi醤を筆頭にしたネットアイドルがなぜ自分たちの「防壁」を築くのはなぜこんなに難しいのだろうか。

 

誰がpapi醤を殺したか?

ネットアイドルの致命的な点は、寿命が短いことだ。社会現象にまでなったpapi醤ですらこの呪いから逃れることは出来ず、半年足らずで下り坂に入ってしまっている。みな不思議なのは、では誰がpapi醤を「殺した」のか?ということだ。

①オリジナル内容の欠乏:コメディアンはスターではない

ネットで最も話題になっている話題や論評を探しうまくビデオに仕立てあげて演じるのがpapi醤のコンテンツの標準的な作り方だ。しかしこのやり方での発展には限界がある。コンテンツそれ自身が借り物である以上、逃れることが出来ない時間差が発生してしまう。新しいネットの話題が発生するのを待つことから最後にビデオができるまでの時間には差があり、SNSでの話題の半減期が短くなるにつれて、ネット民を興奮させることはどんどん難しくなり、涸泽而渔(水を干上げて魚を取る)ような状態に陥ってしまう。

例えば「女性主義の旗を高く掲げる」咪蒙はコンテンツを自分で作る能力がより強い。簡単に言えば咪蒙は「コンテンツを創る」ことができるが、papi醤は「コンテンツで遊んでいる」に過ぎない。咪蒙について話す人は必ず“贱人”や“low逼”といったキーワードを連想する。これらの言葉は特別いいものというわけではないが、それでも微信のグループなどでかなりよく目にする。翻ってpapi醤のショートビデオはあなたが彼女の世界観・価値観とその表現能力に驚きはするものの、結局記憶に残るのは変声器を通した彼女の「鬼畜音声」でしかないのだ。

この問題に気づいたので、papi醤はpapitubeを開設し、ネットアイドルを育てるプラットフォームの方向に舵を切った。しかし新しく生まれたプラットフォームであるpapitubeは彼女自身の個性が強すぎ、また育てる対象の能力にも問題があることは憂慮されている。罗振宇がもし再度ワンマントークショーをできる人材をまた育てようとするなら、これとおなじことが起こるかもしれない。

 

②キャラ設定の限界、生放送後に失われた100万人のファン

「キャラ設定」はネットアイドルやスターを認知するときの一種のタグだ。どのようにしてみんなに覚えさせ、認めさせるのか?まず設定は面白くなければいけないし本人のスタイルや性格とも適合していなければいけない。さまざまなシーンで自由自在に切り替えられる必要もある。

papi醤でいえば、すぐに思いつくのはその女権精神、口のうまさ、頭の回転の速さ、都市部の若い女性のことをよく捕らえていることだろう。しかしその設定はマスタリングとポスプロ編集の結果として生み出されるものでもある。ショートムービーでの彼女はどうなるのだろう?

去年7月11日、papi醤は初めて直播(生放送)を行った。美拍、一直播、花椒、斗鱼など8つのプラットフォームが同時中継し、2時間近い放送の中で2000万人が閲覧した。しかしこれは数としては見栄えが良いが、ネットでの反響はばらばらだった。
まず、放送中のpapi醤の声は低かった(ちょっと男っぽい)。その声は様々な加工を施した動画で聞く彼女の声よりかなり悪く、多くの人をがっかりさせた。次に、動画の中ではあんなに生き生きと輝いていたpapi醤は生放送のときは打って変わって物静かでおしとやかになってしまった。しかも所々、緊張しているような様子さえ見て取れた。それはみんなが思うpapi醤の様子とはまったく違ったので、がっかりさせることになった。ビデオを離れたpapi醤はもはやpapi醤ではなく、これが彼女の個性の限界であるといえる。

③ユーザーの審美疲れ

ひとりのコンテンツIPとして、例えば高晓松は同時に3つの違う製品を紹介し、うけをとることができる。罗振宇であれば言葉遊びができるし、吴晓波であれば経済については評論することが出来る。ビデオをちょっと見に来るだけの中産階級の脆弱な神経はpapi醤のを何度も見るうちに、疲れてきてしまうのだ。

UGC(訳注:User Generated Contents)動画のレースにいち早く参入した身として、papi醤は一定の先行者利益を得てきた。市場の空白部分を速やかに占拠し、業界内の発言権と多くのファンを得て、メディアと投資家の熱い視線を一身に受けた。しかしこのように風当たりの強い業界において、最後に生き残るのは必ずしも最初に参入したものではない。先行者の役割は市場にサンプルを提供する役目であることが多く、人々はそれをどのように発展するのか、どのように危機を回避するのかと観察し、フィードバックを得るのだ。

多くのプレイヤーが進出すると、業界は細分化の道をたどり始める。papi醤とて淘汰の運命から逃れることは出来ない。早口言葉は彼女だけが持つ能力ではないし、前には万万没想到(訳注:2012年に流行したネットドラマ)を制作した万合天宜や老湿がいて、後ろにはサスペンスの怪异君がいる。ネットの流行をまとめる点も彼女だけの特技とはいえない。前には《屌丝男士》の压阵、後ろには《吐槽大会》压轴がいる。気持ちがこもった?熱い涙を流させる技術は袂を分かった罗振宇のものだし、中産階級を秒殺できるのは吴晓波で、働く女性のネガティブな気持ちを吐き出すとなると、やっぱり咪蒙だ。

 

ネットアイドルとスターの間の距離は?

寿命が限られていることはネットアイドル共通の悩みだ。彼らの多くはpapi醤と同様、ネットアイドル2.0–即ちスターへの道を目指した。

豆瓣の女神南笙、张辛苑纷纷は芸能界入りし、テレビやネットドラマの撮影に忙しい。孔连顺と白客は国民の女神と男神になった。艾克里里は広告のイメージキャラクターやイベント出演に忙しい。。。しかし、いったんインターネットという自分の世界からでてしまうと南笙は女神から写真詐欺師になり、笑えるビデオを美妆视频に投稿していた艾克里里はみんなが思う「非主流のビデオブロガー」に成り下がった。微博やb站(訳注:ビリビリ動画、中国におけるニコニコ動画のコピー)から銀幕へ、腐女子が好きなカップルから国民的なアイドルになったTFboysのような奇跡的な成功はコピーすることが出来ないのだ。

ネットアイドルからスターまでの道のりは、なぜこんなに険しいのだろうか?根本をたどると、ネットアイドルとスターのビジネスモデルには大きな差が有ることがわかる。

(1)長期育成vs偶然発掘

スターは発掘されてからデビューに至るまで、長い時間をかけて専門的なトレーニングをうける。H.O.T.、東方神起、SJなど国際的なアイドルグループを継続的に生み出し続けている韓国のマネジメント会社SMを例にとれば、10-16歳のスターの卵を発掘し、選ぶ過程において歌、ダンス、芸、トークなど基本的な技能の訓練に加えて、日常の言動、化粧、飲食、体重などにかんしても要求がある。一定の審査期間を経て最終的に選ばれる新人は自力で生きていける能力を既に持っている。

反対に、ネットアイドルは偶然によって発掘される。彼らはインターネットの情報伝達の早さ、ネット上での事件もしくは個人の才能によって自身に明確なラベリングを施し、超短期間に多くの注目とフォロワーを得てアイドルになっていく。しかし悲しいかな蓄積がないので、ネットアイドルは長期間にわたる安定したコンテンツ生成は難しいし、オーディエンスの要望にあわせて自らを変えていくこともまた難しい。

しかしネットアイドルビジネスの経済的発展につれて、ネットアイドルになるための敷居すら、日増しに高くなってきている。04年に突如として有名になった芙蓉姐姐など草の根型から、近年のモデル司会者などに代表されるEC型ネットアイドル(訳注:淘宝などのECサイトの中で活動し、自身の影響力を使って商品を売る)、そして現在のpapi酱、王思聪、薛之谦などのエリート型にいたるまで、ネットアイドルたちに求められる素質と専門性は明確に上がってきた。微信で認知度が高い罗辑思维、同道大叔、咪蒙などの自媒体は長年の積み重ねがあって初めて自媒体でヒットし、また安定的なコンテンツ生成力を持つに至ったのだ。

(2)組織化された運営vs放し飼い

スターの背後には、設定を考える役、作品を考える役、広告をファンに届けコントロールする役まで一群のチームがある。どんなに小さくても、マネージャー、バックオフィス、PR、弁護士、新媒体などがいるはずだ。华谊兄弟、光线传媒などの大型事務所に至っては、スターから製作チーム、作品の宣伝に至るまでのバリューチェーンをすべて兼ね備えている。スター産業はすべてがビジネス関係し、互いにも密接につながり、業務範囲を拡大し、安定した形でリソースと運転資金を集めることができる。

木村拓哉、嵐などを作り上げて「美少年夢工場」の誉れ高いジャニーズ事務所でいうと、提供するサービスはスクール、雑誌社、番組制作会社、レーベル、コンサート制作会社、グッズ販売など傘下のスターのすべての段階をサポートする様々な会社がそろっている。

ジャニーズが作り上げた「グループ」というあたらしいスターの形には、以下のようないいところがある

  1. 多くのタレントを効率的に露出することができる
  2.  グループの中の人気が高いメンバーが比較的人気のないメンバーを補うことが出来る。他とのコラボより独自色を出しやすい
  3. いったんグループとしての人気が蓄積されれば、それぞれのメンバーは独自に活動することも出来るし、そうすれば市場価値もさらに大きくなることが期待される
  4. 新人がデビューするとき、他のグループのバックに起用するなどで、あらかじめ知名度を上げておくことができる

翻って、ネットアイドルの方式は粗製乱造であり、大部分は長期的な戦略や組織的な運営を欠いた、個人商店の段階にとどまっている。しかし現在のような資本が多く流れ込む市場になり、多くの人がこの市場を認知するようになると、長期的視点のない個人の影響力に頼った「ネットアイドル方式」であったとしても、個人IPからネットアイドル向けのプラットフォームであっても、簡単に資本の支持を得ることが出来る。陈翔6点半、王自如、关爱八卦成长协会などの成功はネットアイドル事務所に融資を得たあと、専門家団体が迅速に加わり個人経営をチーム化、組織化し、コンテンツ提供者から経営者に脱却すべきだという啓示を与えた。

ネットアイドルとスターの間には、人脈にせよ会社によるトータルプロデュースにせよ、大きな差がある。しかしネットアイドルもまたインターネットの力を借りて、急速にターゲットを集め、話題を作り出す能力を備えている。多くの資本が流入するにつれて、ネットアイドルも次第に多くのリソースやチャンネルを得るようになる。そうすればスター化の道は夢ではない。
専門教育を受け、顔もかわいく、その上2260万のファンを持つpapi醤も、個人としてのポジショニングを強化しプラットフォームを深化させることができれば、ひょっとしたらその道をたどることが出来るかもしれない。

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